ニュース速報

ビジネス

ソニー、営業利益予想を上方修正 ゲームや「鬼滅」効果

2020年10月28日(水)19時21分

 ソニーは28日、2021年3月期の営業利益(米国基準)予想を前年比17.2%減の7000億円に上方修正した。写真は米ラスベガスのイベントで1月撮影(2020年 ロイター/Steve Marcus)

[東京 28日 ロイター] - ソニー<6758.T>は28日、2021年3月期の営業利益(米国基準)予想を前年比17.2%減の7000億円に上方修正した。スマホ向けのイメージセンサーを手掛ける半導体分野の売上高見通しを下方修正した一方、次世代ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」の発売を前に「巣ごもり」需要を捉えたゲームや人気アニメ「鬼滅の刃」を手掛けた音楽などの分野で上方修正した。

<「コロナ禍でも成長可能」>

「グループ全体の中長期成長のモメンタムに変化はない。コロナ禍でも経営力強化や成長は可能だ」と、十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO)は会見で手応えを語った。営業利益は、半導体分野を除く全ての分野で増益を見込む。

ゲーム分野の営業利益予想は2400億円を3000億円に引き上げた。ソフトウェアやオンラインサービスの増収が寄与する。十時氏は、コロナによる巣ごもり需要がゲーム事業などに好影響を与えており「下期も継続するとみている」と述べた。ユーザーの総ゲーム時間はピーク時の4月からは落ち込んだものの、9月も前年比30%増の水準で落ち着いているという。

11月に発売するPS5については「非常に強いデマンドと評判、ソフトのラインアップの強さがある。一層、顧客基盤を広げていける期待感がある」とアピールし、先代の「PS4」の発売初年度実績である760万台以上の販売を目指す考えを示した。

PS5のハード単体では「収益貢献というより若干のマイナス」だが、PS5が市場に浸透すればソフトの販売につながり「エコシステム自体が活性化し、収益貢献すると期待している」と述べた。

コロナ禍でゲームソフト開発の遅れが懸念されるが「PS5のローンチ(立ち上げ)に大きな影響を与える遅れは生じていない」とした。ゲームのサブスクリプション(定額制)サービスも強化し、収益拡大を目指すとした。ゲーム分野は「単年度より、中期的にユニバース(顧客基盤)をどれだけ拡大できるかに競争の本質がある」としている。

音楽ストリーミングが好調な音楽分野も、営業利益予想を1300億円から1520億円に上方修正した。子会社が「鬼滅」のアニメ制作・配給に関わっており、ストリーミング・映画などの収入貢献を見込む。

<半導体、本格回復は22年度>

一方、半導体分野の営業利益予想は従来の1300億円から810億円に引き下げた。モバイル機器向けイメージセンサーの減収や一部在庫の評価減が響く。米政府が中国・華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]への輸出規制を強化しており、ソニーのイメージセンサー事業に大きく悪影響を及ぼしているという。ファーウェイ向け出荷は9月15日に停止しており、下期の業績貢献を見込んでいない。

イメージセンサー向けの設備投資額は18年度から3年間累積の計画を8月に7000億円から6500億円に引き下げたが、今回さらに400億円減額する。長崎工場の増設棟の稼働開始はスケジュール通り来年4月としたが、生産能力の増設ペースは21年度計画で見直す可能性があるとした。

ファーウェイ向けは高性能のカスタム品が軸で利幅も大きかったが、来年度は「いったん汎用品中心に、シェアを取りにいく。マージン(利幅)の下落はある程度許容し、顧客ベースを広げる」(十時氏)とした。足元では北米で前年比増加し、中国でも追加受注に努めて一定の成果が出ているという。半導体事業の本格的な収益性回復は2022年度と見込んでいる。

映画分野は上期に劇場公開がほとんどなく「マーチャンダイジングの新作が出てこないので下期の方が悪い」とした。コロナ禍で劇場公開の動向に不確定要素がある上、再開したとしても公開スケジュールの過密化が見込まれ「収益回復が遅れる可能性がある」としている。

売上高予想は同2.9%増の8兆5000億円に、純利益予想は同37.4%増の8000億円にそれぞれ上方修正した。純利益予想が実現すれば、18年度の9163億円に次ぐ過去2番目の水準となる。

前提為替レートは1ドル105円前後、1ユーロ123円前後とした。

<上半期・7―9月期で過去最高>

20年4―9月期の営業利益は前年同期比7.1%増の5461億円で、上半期として過去最高となった。このうち7―9月期は同14%増の3178億円で、7―9月期として過去最高。半導体分野の減益があったものの、ゲームや音楽、家電の各分野の増収が寄与した。

4―9月期の純利益は同103.8%増の6928億円で、このうち7―9月期の純利益は145%増の4596億円だった。日本の連結納税グループで相当部分の繰延税金資産に対する評価性引当金を取り崩した結果、法人税などが減額となった。

(平田紀之 編集:内田慎一)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中