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大企業製造業、17年12月以来の景況改善も反転力鈍く=9月日銀短観

2020年10月01日(木)12時12分

 10月1日、日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)は、大企業・製造業の最近の業況判断指数(DI)がマイナス27となり、17年12月調査以来の改善となった。都内で9月29日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がマイナス27となり、17年12月調査以来の改善となった。大企業・非製造業の業況判断DIはマイナス12と5四半期ぶりに改善した。

内外で経済活動が再開し、09年以来の低水準に落ち込んだ前回からは持ち直したものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う先行き不透明感は強く、先行きのDIは小幅な持ち直しにとどまった。

先行きの業況判断DIは大企業・製造業がマイナス17で市場予測に一致。非製造業はマイナス11で市場予測のマイナス9よりも悪かった。巣ごもり需要やテレワーク需要の一巡への懸念が強いという。

<自動車が回復>

大企業・製造業の業況判断DIは前回のマイナス34から回復したものの、依然マイナス圏。予測中央値のマイナス23よりも悪かった。

輸出、生産、販売が回復し、前回大きく落ち込んだ自動車が持ち直し、自動車関連業種にも波及した。「自動車」はマイナス61で前回比11ポイント改善。関連業種では「業務用機械」がマイナス18(同11ポイント改善)、「電気機械」がマイナス15(同13ポイント改善)などとなった。

半面で、「窯業・土石製品」はマイナス21と前回比13ポイント悪化、「生産用機械」はマイナス43と同6ポイント悪化した。生産用機械では、工作機械などの受注減への懸念が出ていたという。

<対個人サービス、宿泊・飲食が持ち直し>

大企業・非製造業では「小売」がプラス18で前回比16ポイント改善。時短営業の解除や衛生用品の販売好調、新車販売の好調などが要因。

インバウンド需要の蒸発や外出の自粛で前回過去最低となった「対個人サービス」や「宿泊・飲食サービス」も小幅に持ち直した。対個人サービスはマイナス65と前回比5ポイント上昇、宿泊・飲食サービスはマイナス87で同4ポイント上昇となった。

非製造業の業況判断DIもマイナス圏での推移が続く。業況判断DIは予測中央値マイナス9を下回った。

一方、中小企業の非製造業の先行き判断DIはマイナス27で、足元のマイナス22より悪化を見込む。巣ごもり需要やテレワーク需要の反動減への懸念という大企業にも共通する要因に加え、景気拡大局面か後退局面かにかかわらず先行きを悲観的に見る傾向があるという。

<設備投資計画、09年9月以来の減少率>

2020年度の設備投資計画では、全規模・全産業が前年度比マイナス2.7%で前回から1.9%ポイントの下方修正。9月調査時点でマイナスとなるのは2010年度以来、減少率はリーマン・ショック直後の09年9月調査以来の大きさとなった。

大規模・全産業はプラス1.4%と予測中央値のプラス1.3%を上回ったものの、過去10年の平均値を下回った。

企業金融では、企業の資金繰り判断DIが大企業でプラス10、中堅企業でプラス7となり、双方とも前回と変わらず。一方、中小企業ではプラス2と前回から3ポイント改善した。日銀では、政策対応と中小企業の業況感の改善が要因とみている。

金融機関の貸出態度判断DIは大企業がプラス16、中堅企業がプラス21でいずれも前回と同じ。中小企業はプラス20と前回から1ポイント改善した。

前回、雇用「過剰」方向に大幅に振れた雇用人員判断DIは、全規模・全産業でマイナス6と前回から変わらなかった。

事業計画の前提になっている想定為替レート(全規模・全産業)は、20年度のドル/円が107.34円、ユーロ/円が120.42円。ドル/円が6月調査の107.87円より円高に振れる一方、ユーロ/円は前回の119.74円から円安にシフトした。

企業の物価全般の見通しでは、1年後が前年比プラス0.3%と前回から変わらず。一方、3年後はプラス0.6%、5年後はプラス0.8%と、ともに前回を0.1%ポイント下回った。

今回の短観の調査期間は8月27日から9月30日。回答基準日は9月10日で、約7割が回答した。

*設備投資計画などを追加しました

(和田崇彦 グラフ作成:田中志保 編集:青山敦子 橋本浩)

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