ニュース速報

ビジネス

米FRB、低金利維持を確約 インフレ率2%超えまで

2020年09月17日(木)09時24分

米連邦準備理事会(FRB)は15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを8対2で決定した。ワシントンのFRB本部で昨年3月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

[ワシントン 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを決定した。また、インフレ率が2%の目標を超える軌道にあると判断するまで金利をゼロ付近に維持する方針を表明した。

FRBは先月公表した新戦略で2%を超えるインフレ率を容認。これを受け、雇用拡大に向けて新たなガイダンスを打ち出した。[nL4N2FT3YI]

新型コロナウイルス感染拡大の渦中で金融市場の安定化を図る取り組みから、数年にわたる安定した景気回復の実現に軸足を移す中、新たなガイダンス導入に伴い金融政策を巡る議論も活発化している。

FRB内の見解の相違や景気の先行き不透明感を反映し、ガイダンスを巡っては当局者2人が反対票を投じた。

今回のFOMCは11月3日の米大統領選前の最後の会合となった。勝者は低金利が何年も続くと想定される中で就任することになる。FRB当局者のドットチャートによると、1人を除く全員が22年末までの金利据え置きを想定。23年の利上げを予想したのはわずか4人だった。

パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「米経済の回復が進むまで、政策金利を非常に緩和的な状態を維持する」のがFRBの意図だと指摘。インフレ率が2%を「緩やかに超える」ことを目指すとした声明については、経済活動を支え、インフレ率をより迅速に2%目標に回帰させる上で「非常に強力な」文言だとし、フォワードガイダンスは「持続性のある」ものになると語った。

<回復は進行中>

最新の経済見通しでは、今年の経済成長率予想がマイナス3.7%と、6月時点のマイナス6.5%から落ち込み幅の予想が大幅に縮小した。失業率は年末で7.6%と8月の8.4%から低下する見通し。2023年の失業率は4%とした。

パウエル議長は、米経済の回復は進行中だと述べた。また、新型コロナは「甚大な人的・経済的困難を引き起こしている」としながらも、人々は「なお拡大するコロナと共存することを学んでいる」と指摘。社会的距離の確保やマスク着用により、第2・四半期に落ち込んだ経済の大部分が持ち直しつつあるとの認識を示した。

ただ、回復のペースは鈍化することが予想され、FRBのほか、追加の財政支出による継続的な支援が必要だとも指摘した。FRBは資産買い入れペースの加速など追加措置の議論を継続している。

FOMC声明では「目標達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する用意がある」とした。

FRBは今回の声明で、金融市場の安定化から経済の活性化に軸足をシフト。将来の「緩和的な」金融情勢を確保することなどを目指し、現行の少なくとも月額1200億ドルの国債買い入れを継続すると表明した。

緩和維持の表明を受け、米国株は上げ幅を拡大。ただ、終盤にかけてハイテク株の売りに押され、S&P総合500種<.SPX>とナスダック総合<.IXIC>はマイナス圏で引けた。米長期債利回りは上昇、ドルは主要通貨に対し小幅高となった。

最新の経済見通しでは、インフレ率が早期に2%を上回るとは想定していない。

パウエル議長は、FRBはインフレ率が2%を緩やかにオーバーシュートすることに「自信を持っており、コミットし、かつ決心している」と表明。ただ、それには時間がかかるとした。

FOMC声明では「労働市場が最大雇用と一致する水準に到達し、インフレ率が2%に上昇し、当面それを超える軌道にあると判断されるまで」現在の政策金利を維持するとしたが、ダラス連銀のカプラン総裁とミネアポリス連銀のカシュカリ総裁がこれに反対した。

カプラン総裁は、インフレ率と雇用がFRBの目標達成に向けて軌道に乗れば、「柔軟性を高める」ことが好ましいと指摘。一方、カシュカリ総裁は、全体的なインフレ率より冷え込む傾向があるコアインフレ率が「持続的に」2%を達するまで金利を維持すべきと主張し、利上げにより高いハードルを設けるのが望ましいとの考えを示唆した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中