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37.5度以上は「お引き取り願います」、日本企業が感染対策に本腰

2020年02月18日(火)12時20分

2月17日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染が国内で広がりを見せる中、日本企業の対策が本格化してきた。都内で14日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 17日 ロイター] - 新型コロナウイルスによる肺炎の感染が国内で広がりを見せる中、日本企業の対策が本格化してきた。テレワークによる在宅勤務やフレックスタイムでの時差出勤などで人混みを避ける手法が主流だが、サーモグラフィーで計測した来客の体温が一定以上の場合、オフィスへの入室を控えるよう要請する徹底した企業もある。

<エレベーターのボタン消毒>

体温37.5度――。GMOインターネット<9449.T>が設けたオフィスへの入室基準だ。手洗いやうがいの奨励、消毒薬の設置だけでなく、各拠点の受付にサーモグラフィーを置き、基準を超えた来訪客は別に用意した体温計で検温する。なお基準値以上なら、「大変申し訳ないが、お引き取り願う」(同社)という。

さらに、マスクを着けていない来客には着用を要請、エレベーターのボタンは1時間ごとに消毒する。

GMOは1月27日、新型肺炎対策として東京・大阪・福岡の従業員約4000人を対象にいち早く在宅勤務を導入した。国内従業員の約9割に当たる。金融系サービスで法令に対応したり、取引先のセキュリティー上の都合でネットを介したやり取りができないケース、郵便物の受け取り・発送など人の手を介さないといけない場合には「出社を認めている」(同社)という。

国内に20万人の従業員を抱えるNTT<9432.T>も、グループ各社にテレワークや時差出勤の取り組みを強化するよう呼びかけた。具体的な対象者は各社が判断するが、総務や経理といった間接部門の社員が中心となりそうだ。

金融業界では三菱UFJ銀行が国内外を問わず不要不急の出張を控えるほか、香港を含む中国全土への渡航を禁止している。必要に応じ、在宅勤務や時差通勤も推奨している。野村証券は17日、一部を除く本支店でのセミナー開催の中止を決めた。1月15日以降、中国から帰国した社員は14日間出社せず在宅勤務という体制をとっている。

<環境未整備の企業も>

もっとも、在宅勤務を導入しようにも、環境整備が進んでいない企業も少なくない。ある電機メーカーは、「基本的に全員出社する仕組みのため、テレワークの施設・設備が整っていない。ようやく社内議論が始まったが、少なくとも、今回の新型肺炎への対策としては間に合いそうにない」としている。

別の電機メーカーは、過去に時差出勤を導入した際、総じて勤務時間が延び、結局は制度を取りやめた。開発部門など一部の出勤時間が遅れることで、それに連なる試作や調達などの部門まで引きずられる弊害が生じた。

一方、生産の現場では、シフトの組み換えなどにまで踏み込む企業はまだ目立たない。もともと帽子やゴーグル、マスクなどを着用しており、一定の対策は講じているとの立場だ。間接業務の職場に比べて「特段、新たにできることは少ない」(自動車メーカー関係者)と話す。

また、多くの工場が郊外に立地するため、通勤は自動車で個別に移動する機会が多く、工場での作業もある程度の距離を保って作業する。「満員電車で出勤し、隣席と近い距離で仕事をしている都市部に比べれば、濃厚接触のリスクは低いのではないか」(同)との声が聞かれた。

*写真を差し替えて再送しました。

(平田紀之、山口貴也、白木真紀 編集:久保信博※)

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