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金融庁・日銀が連携強化、大手行のストレステストを共同検証へ=関係筋

2019年10月21日(月)16時14分

 10月21日、金融庁と日銀は、金融システム上重要な大手金融機関を対象に共通のシナリオでストレステストを実施するよう求め、その結果を共同で検証する。写真は東京・霞が関の金融庁。2012年10月17日撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

和田崇彦

[東京 21日 ロイター] - 金融庁と日銀は、金融システム上重要な大手金融機関を対象に共通のシナリオでストレステストを実施するよう求め、その結果を共同で検証する。複数の関係筋が21日、明らかにした。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題など金融市場の波乱要因がくすぶる中、統一基準で比較してリスク管理の徹底を図る。現時点で健全性に不安のある金融機関はないとみられるが、金融庁と日銀は危機時に機動的に連携できる体制を構築するため、今後も連携を強化する方針。

金融庁・日銀は、株安や円高など金融市場の緊張が高まった際に、自己資本や手元流動性などにどの程度影響を受けるのか、共通シナリオの作成に着手する。

対象となるのは、「グローバルな金融システム上、重要な銀行」(G-SIBS)に指定されている3メガバンクグループ、「国内の金融システム上重要な銀行」(D-SIBS)に指定された三井住友トラスト・ホールディングス<8309.T>、農林中央金庫、野村ホールディングス<8604.T>、大和証券グループ本社<8601.T>の合計7金融機関。

これまで、各金融機関は独自のシナリオを作成してストレステストを実施し、金融庁が検証してきた。各金融機関の対応がレベルアップする半面、経営陣による議論が減少したり、英国のEU離脱問題や米中貿易摩擦など金融市場が動揺しかねない要因が多くなる中でもストレステスト結果が経営判断に十分に活用されていない事例もあったという。

国際通貨基金(IMF)は16日の金融安定報告書で「長引く低金利環境下でリターンを求める動きにより、世界的にリスク資産の水準が増し、金融状況が突如、急速に調整される可能性が高まった」と分析。各国の政策当局者に警鐘を鳴らした。

金融庁と日銀は、足元で連携を強化している。今年9月には海外投融資の実態調査に着手。投資が急増しているローン担保証券(CLO)も調査対象になっている。

双方の念頭にあるのは、リーマン・ショック後に米国で発足した金融安定監視委員会(FSOC)だ。2010年のドッド・フランク法で、米財務長官を議長に米連邦準備理事会(FRB)などあらゆる金融規制当局を束ねる組織として設立された。

金融庁は、銀行、証券、生損保、仮想通貨交換業と広範な業態の金融機関を一元的に監督しているものの、金融機関の考査を担う日銀とは組織が異なる。これまでも日常的に情報交換してきたが、金融危機を未然に防ぐため一段と連携を強化する必要があるとの認識で一致した。金融機関から見ると、規制当局が一体感を増せば当局対応の負担軽減につながるメリットがある。

金融庁と日銀は、金融システム不安を未然に防ぐ観点から、連携範囲をさらに拡大する方針だ。

大手金融機関は財務健全性を維持しており、今回の共同検証で特定の金融機関に資本の積み増しを求めることは想定されていない。ただ、ストレステストの実施状況に不十分な点があれば改善を求めていくことにしている。

ロイター
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