ニュース速報

ビジネス

中国山東省の民間企業、短期債務の返済に苦慮=S&P

2019年10月21日(月)15時45分

 10月21日、米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、経済規模で中国3位の山東省について、多くの民間企業が短期債務の返済に苦慮していると指摘した。写真は重慶市長寿区にある製鉄所。2018年8月6日撮影(2019年 ロイター/Damir Sagolj)

[北京 21日 ロイター] - 米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、経済規模で中国3位の山東省について、多くの民間企業が短期債務の返済に苦慮していると指摘した。

域内産業のファンダメンタルズが悪化していることや、複雑に入り組んだ相互債務保証、投資の失敗などが背景。

精製、石油化学、鉄鋼、アルミニウム、繊維など供給能力が過剰な産業では、中国経済の減速や環境対策の施行も、企業の利益と資金繰りを圧迫する要因になっている。

S&Pの中国スペシャリスト、Chang Li氏は「山東省の経済は、負債比率の高い企業が多い従来型重工業に偏っている」と指摘。

「山東省の民間企業の苦境は、中国全体の課題を示唆している。高水準の負債と成長鈍化に対応しながら高付加価値経済に移行する難しさだ」と述べた。

同省の民間企業は、相互保証を利用することが多く、1社の資金繰り悪化が信用システム全体に波及するリスクがあるという。

ロイターが裁判所の記録を引用して今年2月に報じたところによると、石油精製業と重工業の一大拠点である山東省東営市では少なくとも民間28社が債務再編を通じて経営破綻を回避しようとしている。保証していた他の企業の債務が焦げ付いたことが主な原因だ。[nL3N2081B7]

特に従来型の資本集約型産業では、民間企業が銀行を融資を受けるには、大規模な担保や別の企業の債務保証が必要になることが多い。債務を保証した企業も、他の企業に債務保証を依頼している可能性が非常に高い。

情報開示の不足も、状況の悪化に拍車をかける原因となっており、複雑な相互保証を背景に支払い能力を巡るリスクが、地域全体に拡大する恐れもある。

S&Pは「中国経済の減速を踏まえると、山東省の民間企業の流動性と借り換えを巡る問題が、直ちに解決するとは思えない。山東省の民間企業は今後12カ月間、信用リスクが高い状態が続くだろう」と述べた。

S&Pによると、山東省政府は近年、付加価値の高い産業を優遇しており、供給能力が過剰な産業で一部の民間企業が倒産しても、システミックリスクが生じない限り、救済しない可能性がある。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中