ニュース速報

ビジネス

貿易リスクなど高水準、「会合ごとに」金利決定へ=セントルイス連銀総裁

2019年10月16日(水)03時01分

 10月15日、米セントルイス地区連銀のブラード総裁(写真)は、貿易などのリスクが依然高水準で、米経済が想定以上に速いペースで減速する可能性があると指摘した。写真はシンガポールで昨年10月撮影(2019年 ロイター/Edgar Su)

[ワシントン/ロンドン 15日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は15日、ロンドンで行った講演で、貿易などのリスクが依然高水準で米経済が想定以上に速いペースで減速する可能性があると指摘した。それを踏まえ、米連邦準備理事会(FRB)は「今後、さらなる緩和措置を選択する可能性があるが、会合ごとに判断を下すことになる」との認識を示した。

米中の貿易に関する部分合意には触れなかったが、世界的な通商問題を巡る先行き不透明性は場合によって何年も継続する可能性があると指摘。貿易戦争に関連する警告や暫定合意の発表や撤回を巡るニュースが毎日のように出てくることは通商体制の不確実性を如実に示しているとし、「向こう数年でこうした状況が解消するとは考えていない」と述べた。

その後記者団に対し、米中通商問題により「パンドラの箱」が開けられ、世界貿易の開放性が反転する可能性があるとの考えを示した。

このほか、起こり得る可能性のある「通常のリセッション(景気後退)」へのFRBの対応策にも触れ、ゼロ金利政策、資産買い入れの再開、景気支援的な政策の確約などの選択肢は陳腐化していないとの考えを示した。

ただ、欧州中央銀行(ECB)や日銀などが導入しているマイナス金利政策については、FRBの選択肢にないと指摘。「マイナス金利政策は支持していない。導入された国や地域の状況から判断するとまちまちの結果をもたらす」とし、米国で導入された場合、規模が大きい米短期金融市場がどのように反応するのかは分からないと述べた。

ブラード総裁は、0.25%ポイントの利下げを決定した9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.50ポイントの利下げを主張。FRB当局者の中ではハト派と見なされている。

ただこの日の講演では、米経済が直面しているリスクが過大評価されていたと判明した場合、FRBは来年にも利上げに転じる可能性があると表明。

米経済の見通しが改善すれば、今年実施した2回の「保険」としての利下げを反転させることが可能だとし、「我々は現在利下げを進めており、幅広い下振れリスクを引き受けているが、下振れリスクに対する懸念が行き過ぎだったことが判明すれば、2020年と2021年にこうした保険を元に戻すことが可能だ」と述べた。

総裁は、FRBの先の速やかな利下げが、長期にわたる2年債と10年債の利回り逆転現象の解消に寄与したことを期待するとも発言した。

このほか、レポ取引を通した資金供給について、FRBによる資金供給の恩恵を銀行が受ける機会を拡大するものと説明。「レポファシリティーに発展することを願っている」と述べた。

その上で、向こう6カ月間で実現する可能性があるとの見方を示し、実現すればFRBが設定するフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標から短期金利が乖離する問題は発生しなくなると述べた。

総裁は、ロンドンで開かれたMMF主催の会議で、ゼロ金利・資産買い入れ・フォワードガイダンスは依然としてFRBの「通常の景気後退」時の戦略だとも発言。この3つを推奨したイエレン前議長の論文は今も「最先端」の内容だとの認識を示した。

また、今年進めているFRBの金融政策の枠組みに関する包括的な見直しについては「大きな変更は予想していない」とし「革命ではなく進化」になるだろうとの見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中