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英中銀、19年終盤前の利上げ示唆 総裁「円滑なEU離脱なら成長継続」

2017年05月12日(金)10時04分

 5月11日、イングランド銀行(英中央銀行、写真)は、政策金利を市場予想より早い2019年終盤前に引き上げる必要が生じる可能性を示唆した。4月撮影(2017年 ロイター/Hannah McKay)

[ロンドン 11日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は11日、政策金利を市場予想より早い2019年終盤前に引き上げる必要が生じる可能性を示唆した。円滑な欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が実現できれば、英経済は今後数年において、昨年同様の底堅い成長ペースを維持する見通しとした。

総選挙をわずか1カ月後に控え、中銀はEU離脱決定後のインフレによる家計への短期的影響が、2月の当初予想より大きい可能性を指摘。物価上昇は今年終盤に2.8%超でピークに達すると予想した。

カーニー中銀総裁は会見で、中銀の見通しは、英国が期限までに将来の関係を巡る合意が得られない「無秩序なブレグジット」のシナリオには基づいていないと指摘。

インフレ率は今年3%に迫る見通しで、「賃金が物価に追いつかず、所得の実質の伸びはマイナスとなるなど、家計にとっては一段と厳しさが増すだろう」と述べた。ただ、経済はまだ成長を続け、就業者数は過去最高に達している状況を勘案する必要があるとも加えた。

英経済については昨年の国民投票以来、リセッションの可能性が縮小。主要先進国の中でも最も成長率が高い国の1つとなった。

ただ、EUとの2年間の離脱交渉を前に厳しい時期が到来すると見込むエコノミストは多い。

中銀は「英国が世界との新たな通商合意の締結に向かう中で生じる必要な調整、またこれに伴うであろう実質賃金の弱い伸びを金融政策で回避することはできない」とし、ブレグジットによる経済への打撃を巡っては金融政策が支援できる部分は少ないとの考えを示した。

一方で、中銀は海外貿易や投資は回復が見込まれ、今年の内需縮小分を補完すると予想。賃金上昇の回復や失業率低下を予想した。

中銀は「金融政策は、市場のイールドカーブが示すような緩やかな上昇より、ある程度広い範囲でタイト化させる必要があるかもしれない」と指摘。英国が2019年にEUを離脱する頃に利上げに着手する必要があるかもしれないとの見解を示した。

中銀の発表を受けて、ポンドは下落。金融政策委は今回、7対1で市場予想通り、政策金利を0.25%に据え置くことを決定したが、一部では利上げの必要性を巡り意見が一段と割れるとの見方が出ていたことが背景にある。

中銀は、今年の成長見通しを2.0%から1.9%へ下方修正した。ただ、18年は1.7%、19年は1.8%に若干引き上げた。

インフレ率については2年以内に2.16%へ低下すると予想。その後、2020年にかけて徐々に上昇するとの見方を示した。2.16%は、中銀目標を上回る水準。

賃金の伸びは来年、現在の2%増から3.5%増に加速を見込む。企業が人材を確保するのが困難になるためとしている。

*一部表現を削除し再送します。

ロイター
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