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アングル:自動車の新技術導入順位、モデル内で「下剋上」の動き

2016年01月12日(火)16時09分

 1月11日、大手自動車メーカーはこれまで最新技術の導入で大型の旗艦モデルを優先し、モデル間の序列を維持してきたが、こうした戦略を密かに修正する動きが出ている。写真はメルセデス・ベンツのロゴ。インドのチャカンで昨年6月撮影(2016年 ロイター/Danish Siddiqui)

[デトロイト 11日 ロイター] - 大手自動車メーカーはこれまで最新技術の導入で大型の旗艦モデルを優先し、モデル間の序列を維持してきた。しかし現在開催中の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)では独ダイムラー の高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」などがこうした戦略を密かに修正し、モデル内で「下剋上」が起きている様子があらわになった。

11日に発表されたメルセデスの中型セダン「Eクラス」に搭載された半導体やカメラ、ソフトウエア、センサーなどの技術は、より車格の高い旗艦モデル「Sクラス」に組み込まれているものよりも性能が上だった。メルセデスはこれまで最新技術については「Sクラス」に最初に搭載する方針を何十年も貫いてきた。

メルセデス部門を率いるディーター・ツェッチェ・ダイムラー社長はEクラス発表の傍らロイターのインタビューに応じ「技術革新のペースは非常に速く、新型車を出すたびに導入しなければならない」と話した。

新技術導入をめぐる軌道修正が反映しているのは、メーカー各社に対してモデルのラインナップに常に最も新しい技術を導入し続けるよう求める圧力が高まっており、とりわけ若い顧客の獲得競争でそうした傾向が強いことだ。また米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズが採用している、ソフトをアップデート可能な仕組みも業界に広がりそうだ。

メルセデスはこうしたソフトのアップデートとともに、ハードウエアについても積極的に最新技術の導入を進めている。デジタルプロトタイプの利用により試作車の開発期間を18カ月から10カ月に短縮。空気力学試験ではシミュレーション用ソフトの利用により風洞実験にかかる期間を短くした。

最新型Eクラスに搭載された運転支援システムは第4世代。これに対してSクラスのシステムは第3世代だ。

新型Eクラスはセンサーやソフトも道路状況などを認識するアルゴリズムの点でSクラスを凌ぎ、Sクラスにはない自動車同士で通信を交わす機能も備えている。

これは新型Eクラスの発表が最新技術の搭載や自動運転車導入に向けた規制の手直しの面でタイミングが合っていたためだ。

調査会社ガートナーのシロ・コスロウスキ副社長は「これまでは常に最良の機能は最も車格の高いモデルに搭載されてきた。これはもう自動車業界にとって最も優れた問題解決法ではない」と指摘。「若い顧客層はすぐに最新技術を手にしたいと思っている。メーカーはこれまでのやり方を変える必要に迫られ、高級車の定義付けも変わるだろう」と話した。

ツェッチェ氏は、こうした戦略修正によってSクラス購入層の一部が価格の安いEクラスに流れる可能性は認めつつ、より重要な狙いはアウディやBMWなど競合他社から顧客を奪うことにあるとした。

(Edward Taylor記者)

ロイター
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