ニュース速報

英がイランのタンカー拿捕、西側との対立激化の恐れ

2019年07月05日(金)09時46分

[ロンドン/ドバイ 4日 ロイター] - 英海兵隊は4日、欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアに原油を輸送していた疑いのあるイランの大型石油タンカーを英領ジブラルタル沖で拿捕した。欧州はシリアへの石油輸出を2011年から禁止しているが、米国のように広範な対イラン制裁は発動させていない。欧州諸国による石油タンカーの拿捕も今回が初めでて、イランと西側諸国の対立が激化する恐れがある。

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は英国の動きを歓迎し、シリアとイラン両国が違法取引によって利益を上げる行為を、同盟国とともに未然に防ぎ続ける方針を表明した。

拿捕されたタンカーは30万トン級の「グレース1」。中東から地中海方面に向けアフリカ大陸南端沖を航行した後、スペイン南端の英領海内で拿捕された。海洋情報筋によると、タンカーはスエズ運河を通る場合、積荷をいったん降ろす必要が生じ、押収される恐れもあるため、同運河を避けアフリカ回りの航路を選択した可能性があるという。

これを受け、イラン外務省はイラン駐在の英大使を呼び、拿捕は「違法で容認できない」として厳重に抗議。拿捕されたタンカーはパナマ船籍で、運航会社としてシンガポールに拠点を置く企業が登録されているが、イラン外務省が英大使に抗議したことから、イランのタンカーであることが明確になった。

ロイターが入手した輸送に関する情報によると、グレース1はイランの沖合いで積荷されたイラン産原油を輸送していた可能性がある。ただ同タンカーの文書には積載された原油はイラク産と記載されている。

企業に対し制裁措置に関する助言を行なっている法律会社ピルスベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマンのパートナー、マシュー・オレスマン氏は「EUが世界の目の前でこうした強い行動に出ることはこれまではなかった」とし、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍隊が関与していることを踏まえると、米国と何らかの方法で調整が行われていたと考えている」と指摘。「シリアとイランのほか、米国に対し、欧州は制裁措置の履行に真剣な態度で臨んでおり、イランの核プログラムを巡る問題に対応する能力もあるとのメッセージを送る意味合いがあった公算が大きい」と述べた。

ジブラルタル自治政府の当局者は、拿捕されたタンカーが所属する国のほか、積載されている原油がどの国のものかについては言及していない。ただジブラルタル自治政府は、グレース1がシリアのバニヤス製油所向けに原油を輸送していたと見なす根拠はあると指摘。ジブラルタル自治政府のピカルド首相は「バニヤス製油所はEU制裁措置の対象となっている組織が所有している」とし、「ジブラルタル当局は英海兵隊の支援を受けタンカーを拿捕した」と述べた。

英首相報道官は、メイ首相はタンカー拿捕を支持していると表明。ただ英外務省からコメントは得られていない。

ジブラルタルの帰属を英国と争っているスペインは、拿捕は米国が英国に要請したもので、スペイン領海内で行われた可能性があるとの見方を示した。

グレース1について、ロイターは今年に入り、米制裁措置に違反してイラン産原油をシンガポールと中国に輸送しているタンカーの1隻だと報道していた。グレース1の運航会社としてシンガポールに本拠を置く「IShips Management」が登録されているが、ロイターはこの会社と連絡は取れていない。

文書には、グレース1は昨年12月にイラクのバスラにある港湾施設で原油を積荷したと記載されているが、バスラではグレース1が入港したとの記録はなかった。また、グレース1の位置情報を知らせるトラッキングシステムのスイッチは切られていた。その後、グレース1は完全に積載した状態でイランのバンダル・アサルーイェ港付近でトラッキングマップ上に現れた。

ロンドンに本拠を置くエネルギーデータ企業、Kplerのシニアアナリスト、ホマヨウン・ファラクシャヒ氏はロイターに対し、グレース1は4月中旬にイラン産原油をイランのハールク島にある港湾施設で積荷したと明らかにしている。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米国株式市場=急反発、AI関連銘柄が高い 原油

ワールド

IEA、備蓄追加放出も ホルムズ海峡再開が鍵=事務

ワールド

IEA、備蓄追加放出も ホルムズ海峡再開が鍵=事務

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、一連の中銀決定会合に注目
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中