ニュース速報

物価勢い毀損なら直ちに追加緩和、先んじて政策もあり得る=若田部日銀副総裁

2019年06月27日(木)15時55分

[青森市 27日 ロイター] - 日銀の若田部昌澄副総裁は27日、青森県金融経済懇談会後に記者会見し「大きな下押し圧力があり、2%の物価安定目標のモメンタムを毀損すると分かれば、直ちにちゅうちょなく追加緩和する」との姿勢を繰り返した。また、将来的に2%の物価目標を実現できないと確信が持てれば、先んじて政策を打つこともあり得るとした。

若田部副総裁は、金融政策運営に当たっては「足元の経済の動きを見ていくことも重要だが、そのことが中長期的に予想物価上昇率にどのような影響を及ぼすかをきちんと見ていかなければならない」とし「このままでいくと2%の達成が難しいと合意できるなら、先んじて政策手段を取るということはあり得る」、「将来においてインフレ目標達成できないと確信が持てるなら、そこで行動することが必要」と述べた。

物価目標に向けたモメンタムが失われるなら、ちゅうちょなく追加緩和を検討するという姿勢をコミットメントとして明確化する必要があるかとの質問に対しては「今後の方針にかかわることなのでコメントは差し控える」とした。そのうえで「現在出しているステートメントでは、2%の物価目標を掲げ適切な政策を取っていくと言っている。ある種のコミットメントを示しているなら、それ以上は必要ないとの意見もある」と述べた。

マネタリーベースの伸びが鈍化していることに関して、副総裁は「マネタリーベースの伸びは重要な金融政策のパーツ」とし「マネタリーベースの伸びの鈍化が長期的に続くことは考えていない」と述べた。一時的に伸びが鈍化することは起こり得るものの、消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」は維持していく方針を示した。

長期金利はゼロ%程度から上下0.2%程度の変動を許容している。これについて、若田部副総裁は「厳密に上下0.2%にぶつかったら直ちに何か起こすものではない。それなりに幅を持って機能している」と述べた。こうしたことから、イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みも「10年物長期金利の幅の許容も含めて機能している。現状、これを大きく変更すべきであるということはない」とした。

米中貿易摩擦は「その帰すうが世界経済の大きな下振れリスク要因であることは間違いない」とし、日本経済に対しては、短期的にはプラスとの指摘があるものの「激化すると、下押し圧力が強くなる」と述べた。また、市場を通じてショックが波及すると「影響はさらに大きくなる」と懸念を示した。

午前中の講演では、世界的な低金利・低インフレの下で、金融政策の枠組みでさまざまな検討が行われていることについて触れた。これについて「日銀でも重要な問題、関心」と述べた。ただ「具体的に金融政策決定会合で議論されるべきかというと、現時点ではそうではないと考えている」とした。

フェイスブックの仮想通貨(暗号資産)「リブラ」について「詳細を十分理解しているわけではない」とし、コメントを控えた。ただ、金融システムや金融政策に及ぼす影響など、暗合資産のあり方などについては、今後議論が進んでいくべきとした。

金融緩和政策による金利引き下げが、ある一定の水準を超えると緩和効果が反転するという「リバーサル・レート」について、副総裁は、貸し出しが伸びているなど日本経済の現状を踏まえると「リバーサル・レートは理論的に考えられても、現状でそこに至っているという判断はしていない」と述べた。

(清水律子 編集:内田慎一)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中