コラム

財務省の先制攻撃が始まった

2009年08月05日(水)15時50分

 革命(あるいは少なくとも行財政改革)の足音が迫るなか、財務省は古典的な先制攻撃を仕掛けているようだ。民主党、自民党とも政権公約に「ムダの削減」を掲げ、政権を取れば真剣に取り組む構えだからだ。財務省は各省庁に、8月末までに自ら「予算のムダ」を洗い出すよう促すことにした。とりわけ非効率な公共事業に焦点を当てている。

 財務省は明らかに、民主党政権誕生の可能性に備えていくらか譲歩の姿勢を見せようとしている。それによって少なくとも短期的には、官僚任せの予算からの脱却をうたう民主党の機先を制することができると期待している。だが、この先制攻撃は失敗に終わる可能性が高い。

 民主党は、憲法上は与党に基礎を置く内閣に与えられた予算編成権を取り戻したがっている。鳩山由紀夫代表は7月、財務省の丹呉泰健事務次官に政治主導の予算編成を担う「国家戦略局」の構想を示した。丹呉は構想を称賛したが、全体には沈黙がちだったかもしれない。もっとも、小泉純一郎元首相の秘書官を務めた丹呉は、「政治主導」に対してより柔軟な可能性もある。

 いずれにせよ、戦いはまだ序盤に過ぎない。8月30日の総選挙でもし民主党が政権を取れば、最後は決戦にもつれ込む可能性がある。民主党はおそらく、各省庁の自主的な予算削減だけでは満足しないだろう。だが、もし民主党が本気で予算の「総組み替え」を追求し、政治家が予算の大枠だけでなく細かな配分や使途にまで権限と責任をもつ仕組みに変えようとすれば、財務省との全面戦争に発展するだろう。

[日本時間2009年08月04日(火)17時54分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、市民権取得規則を厳格化へ 移民抑制図

ビジネス

イーライリリー、次世代細胞療法バイオベンチャーを2

ワールド

エプスタイン氏共犯者、トランプ氏に恩赦要請 議会証

ビジネス

物価高で節約志向強まる、家計の軽減策訴え 内閣府の
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 9
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 10
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story