<EU周辺の地政学的パワーバランスが再編されるかも>
[ロンドン発]旧ユーゴスラビア構成国のセルビアで10月25日、議会(定数250)選が投開票され、政権への抗議デモを続けてきた学生らが主導する新興勢力「学生リスト」が過半数の141議席を獲得し、2012年から政権を握ってきた右派ポピュリストのセルビア進歩党を破った。
【動画】セルビアの選挙で「学生リスト」が勝利…誰が国家運営していくのか?
12年間にわたり首相、大統領を務め、ロシアと中国に接近してきたバルカンの強権的指導者アレクサンダル・ブチッチ前大統領(56)の退場は4月にハンガリーのオルバン・ビクトル首相が敗れたのに続く欧州政治の地殻変動と言えるだろう。
政変の引き金となったのは24年11月にセルビア北部ノビサドで起きた駅舎のひさし崩落事故だ。16人が尊い命を落とし、市民の間でブチッチ政権の汚職、手抜き工事、公共インフラに対する説明責任の欠如に激しい怒りが沸き起こった。
「セルビアか、マフィアか」セルビアで最大規模の政治運動
当初は学生による道路封鎖や行進から始まった抗議は教師や農民など幅広い社会層へと拡大し、「セルビアか、マフィアか」と問いかけ、00年のスロボダン・ミロシェビッチ政権崩壊以降、セルビアで最大規模の政治運動へと発展した。
草の根民主主義の集会形式で意思決定を行い「学生リスト」を結成。実際の候補者名簿には学生がほとんど含まれておらず、候補者は大学教授、医師、芸術家など専門職で占められた。法の支配と民主主義の回復、汚職・犯罪の徹底追及など11項目の目標を掲げた。
セルビアでは憲法で大統領の3選を禁止している。ブチッチ氏は来年5月で大統領2期目の任期満了を迎えるため、9月末に大統領を辞任して首相候補として解散・総選挙を仕掛けた。ウラジーミル・プーチン露大統領がメドベージェフ体制下で行った手法を想起させる。