今年3月初め、3語のスローガンがX(旧ツイッター)に投稿された。「ハンズ・オフ・アジア!(アジアから手を引け!)」

その日の膨大な数の投稿のうちの1件にすぎなかった。投稿したのは、トライコンチネンタル社会研究所の所長ビジャイ・プラシャドのアカウント。同研究所はアメリカで登録済みの政治活動ネットワークであり、上海を拠点とするアメリカ人のIT富豪ネビル・ロイ・シンガムから資金提供を受けている。

ビジャイ・プラシャドの投稿。(左から2人おいて)所長のプラシャド、アジア共同調整役のティングス・チャク VIJAYPRASHAD/X

政治戦の火ぶたが切って落とされた。4月末には、このスローガンを掲げた運動の発足イベントが北京に座長を置いてオンラインで開かれた。7月にはスリランカ最大の都市コロンボで開かれた会議で、宣言を採択している。運動はさらにアメリカへと広がり、8月にはフィラデルフィアとニューヨークで集会が開かれた。

スローガンは瞬時に広まることがある。だが今回のものは、勝手に世界を巡ってアメリカにたどり着いたわけではない。本誌の調査から以下の点が明らかになった。

  • シンガムから多額の資金提供を受ける国際的ネットワークが、ベトナム戦争でのサイゴン陥落から51周年の日に北京から、アジアの米軍基地に反対する政治運動を立ち上げた。
  • 本誌は数十件に上るアカウントやウェブサイト、動画、イベントの写真を調査した。そこから数百の組織が同じメッセージを発信し、シンガムが資金提供してきた団体につながっていることが分かった。
  • 本誌だけに提供された分析によれば、一部のTikTok(ティックトック)利用者には、視聴などで示した関心の度合いから説明できる頻度をはるかに超えて、反米コンテンツが配信されていた。この増幅はプラットフォーム内部から生じていると、研究者らはみている。
中国の「政治戦」にアメリカは対応できない
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