たばこによる健康被害をいかに減らすか──。その一つの方法として考えられているのが、たばこハームリダクションだ。これは、「喫煙者を科学的根拠に基づいたリスクの少ない代替製品に移行させて、健康被害をできる限り減らす」という公衆衛生上のアプローチで、紙巻きたばこからスモークレス製品への切り替えなどはその代表例といえる。
こうした取り組みを推進するブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BATジャパン)は、10月13日、東京都内でメディアラウンドテーブルを開催。モダン・オーラルたばこをはじめとするスモークレス製品に注力する立場から、たばこハームリダクションの科学的根拠と、それを支える自社の研究体制について紹介した。登壇したのは、BATグローバルライフサイエンス部門責任者のクリス・ジュンカー氏と、科学渉外部門責任者のマリアナ・ガツァ氏だ。
ガツァ氏によれば、BATでは世界7拠点に約1800人の専門家を擁する研究ネットワークを構築。2024年には、英国サウサンプトンに50億円以上を投じたイノベーションセンターを新規開設するなど、新カテゴリー製品の研究開発とそれを支える科学的な知見の蓄積に意欲的に取り組んできたという。
また、「製品の科学的根拠は、単一の研究や科学分野だけでは確立できない」(ガツァ氏)との考えから生物学、毒性学といった複数分野の研究と国際規格に準拠した試験を組み合わせ、評価の信頼性を高めているのも同社の大きな特徴だ。
研究施設の紹介に続いては、ジュンカー氏が製品のリスクを評価する際に使われている「9ステップの科学的評価フレームワーク」について解説。フレームワークは、①製品の排出物と生物学的影響、②個人レベルでの有害物質の曝露量、③集団レベルでの健康リスクという3つの柱で構成され、その多角的な検証が科学的エビデンスの構築につながっていることを紹介した。
その中で特に注目なのは、モダン・オーラルたばこ製品やニコチンパウチと紙巻きたばこの「有害物質の違い」に関する検証だ。燃焼を伴わない前者は、WHOが低減を優先する9種類の有害物質について、紙巻たばことの煙と比べて99%以上減少したとの結果が出ている。
さらに紙巻きたばこの喫煙者、ニコチンパウチのみの使用者、たばこやニコチンの使用をやめた元喫煙者を比較した臨床研究でも、ニコチンパウチ使用者の有害物質への曝露を示すバイオマーカーの平均値が、喫煙者より79.7%低下することがわかったという。これは、喫煙をやめたグループの数値(喫煙者と比べて77.7%低下)と同レベルであり、スモークレス製品への切り替えによる健康リスク低減の可能性を裏付ける結果といえるだろう。
かつて、たばこの健康リスクを低減する方法は「たばこを吸うか、やめるか」という二者択一が主流だった。しかし、現在はたばこハームリダクションの考え方が、二者択一を超えた新たな選択肢になりつつある。BATによるスモークレス製品の科学的検証と知見の蓄積は、そうした時代背景を追い風に、今後もたばこハームリダクションの可能性を考えるうえでますます重要になっていくはずだ。