中国共産党の第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)の開催を前に、国外の中国語圏では最高指導部の人事をめぐる噂が飛び交った。
とっぴな説は、政権ナンバー2の李強(リー・チアン)首相が既に習近平(シー・チンピン)国家主席の後継者に指名されており、5中全会で党総書記の座を引き継ぐというものだ。昨年の4中全会の前には、政治局常務委員の蔡奇(ツァイ・チー)の名前が取り沙汰されていた。
いずれも信憑性はない。だが、2つの噂からは中国の最高指導部の政治構造について、ある重要な事実が図らずも浮かび上がってくる。それは、習が自身の権力を維持する上で、最重要側近である李と蔡に大きく依存していることだ。
習の権力がいくら強大でも、中国という巨大な統治機構や共産党そのものを1人で動かすことはできない。
現在の政治局で習にとって欠かせない存在が李と蔡だ。李は政務、蔡は党務を取り仕切っている。習を含めたこの3人こそが習時代の最高指導部の中枢で、筆者は「3人組」と呼んでいる。
「3人組」と言っても、文化大革命(1966~76年)で悪名をはせた「四人組」のような派閥をつくっているわけではない。
中国の初代首相、周恩来は政府の最高指導部に加わった軍幹部に対し、政局を理解するには「中央政治」をよく理解し、うまく立ち回る必要があると説いていた。周の言う中央政治は、当時、強大な権力を握っていた毛沢東、軍指導者の林彪、毛の妻である江青の3人の関係を意味した。
習と李と蔡の関係も、同じく不均衡な三角形を成している。最高権力者の習の下、2人は異なる役割と共通の利害を持ち、潜在的には競争相手でもある。