<その女性はマドリードに70年近く住んでいたが>

[ロンドン発]ホームレスや生活困窮者が路上販売した売上の一部を自身の生活再建資金にする英国のストリートペーパー「ビッグイシュー」(9月27日付)で、スペイン・マドリードで起きた87歳の女性マリカルメン・アバスカルさんの強制退去事件が取り上げられている。

アバスカルさんは1956年、家族でマドリードに引っ越してきた。父は4年後に亡くなり、母も2005年に亡くなった。速記とタイピングの訓練を受け、秘書業務も学んだ彼女は米国の製薬会社に34年間勤務し、退職するまで役員の秘書を務めた。

住まいの賃貸借契約は父が結んだもので、父から母へ、そしてアバスカルさんに受け継がれた。その間、所有権は移転し、最後に購入した不動産会社が「賃借権は2度目の承継では2年間に限定されており、無期限には続かない」と立ち退きを求めて契約解除の手続きを始めた。

「新たなアバスカルさんを出すな」

アバスカルさんは月約1350ユーロの年金を受給し、その中から月約500ユーロの家賃を支払っていた。
不動産会社は当初、月2650ユーロ、のちに1650ユーロに引き下げて新契約を提示したが、それでもアバスカルさんにはとても支払える金額ではなかった。

長年にわたり身体の移動機能に問題を抱えてきたアバスカルさんは立ち退きを拒否して提訴。一審こそ勝訴したが二審敗訴、最高裁への上告も退けられ、契約解除が確定した。障害等級が65%以上の場合は賃貸借契約の延長が認められるものの、アバスカルさんの等級は50%だった。

当初、退去は昨年10月に予定されていたが、マドリード賃借人組合が「新たなアバスカルさんを出すな」というスローガンを掲げて立ち退き反対運動を展開。数百人の近隣住民や活動家、文化人、政治家が運動に参加した。

長年鬱積してきた市民の「家賃高騰への不満」が爆発
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