レイ・イナモトを形づくった2冊の本
──最後に、イナモトさんのキャリアや価値観に影響を与えた本を教えてください。
1冊目は、14歳の頃、家具職人の父から渡された『精神と物質』(利根川進・立花隆 著)です。ノーベル賞受賞者の利根川進さんが、脳科学の進歩によって、人間の感情もいずれ解明される時代がくると語っていたことに、深く共感しました。そのとき直感したのが、「科学的に感情のメカニズムがわかれば、人を感動させるプロセスを、より明確に設計できるのではないか」ということです。
その頃から、サイエンスとアートを融合させたいという思いが芽生えていました。今振り返ると、自分のテーマの原点だったといえます。
2冊目は、厳密にはアートかもしれませんが、ジョン・マエダさんが手がけた『The Reactive Square』です。僕が高校生か大学生の頃、書店でフロッピーディスク付きの書籍として売られていて、Mac上でデザインを味わうインタラクティブな作品でした。
当時としてはかなり斬新な「デザインとテクノロジーの融合」を目にし、「いつかこういうものをつくりたい」と思うほど強く影響を受けました。
子どもの頃から、父親の工房が近所にあり、母親も音楽をやっていたので、ものづくりや人を感動させるアートが身近な存在でした。こうした背景も相まって、この2冊が「テクノロジーとアートで人に感動を与えたい」という思いの原点にあると感じています。

レイ・イナモト
I&CO創業パートナー/クリエイティブ・ディレクター
米Creativity誌「世界で最も影響力のある50人」、米Forbes誌「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出され、ニューヨークを拠点に世界で活躍するクリエイティブ・ディレクター。
米大手デジタルエージェンシーR/GAを経て、欧米大手デジタルエージェンシーAKQAに所属し、ナイキ、アウディ、Xbox、グーグル等、世界を代表するブランドのデジタル戦略とクリエイティブを数多く手がける。2013年と2019年には日本人として初めて、カンヌ国際広告祭モバイル部門、デジタルクラフトの複数部門の審査委員長に抜擢。2016年にI&COを立ち上げ、2019年7月に東京オフィスを開設。
flier編集部
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曖昧すぎる目標、敵国の軽視、自国軍事力への過信……長期化・泥沼化したベトナム戦争との共通点
