強いブランドは「倫理的な敵」を明らかにしている

──国や業界を超えて、強いブランドに共通する要素は何でしょうか。また、差別化につながる「対比軸」を見つける上で大切な考え方があれば教えてください。

「強いブランドの5つの条件」として、①象徴があるか、②代名詞があるか、③目に見えるか、④美意識があるか、⑤敵がいるか、を挙げています。

詳しい内容は本書に譲りますが、対比軸を見つけるうえで参考になるのが、「敵がいるか」という条件です。ここでの敵とは、競合他社というより「倫理的な敵」を意味します。

わかりやすい例として、1984年に初代Macintoshを発売したAppleがあります。同社は小説『1984年』の世界観をオマージュし、当時のコンピューター業界をリードする存在だったIBMをモチーフとして風刺的に描くCMを打ったことで、強烈な印象を残しました。このときAppleの本当の敵は、IBMという企業ではなく、「個性のなさ」だったんですよね。均質な組織で、画一的に働いている状況と倫理的に戦っていたのです。それが「Macを使えば個性を表現できる」というAppleのメッセージにつながっていきました。

また、先ほどのAnthropicとOpenAIの対比でいうと、「安全性を二の次にした完全なAI」こそが、Anthropicの倫理的な敵です。だからこそ、あらゆる判断で一貫して「Safety first」を優先しています。

さらにAirbnbの場合は、「一時的に宿泊するホテル」ではなく、「世界中どこでも自分の居場所になるサービス」という対比軸を設けています。これも、倫理的な観点から同社が何を大切にするかを明確にしたことで生まれたものです。社員も投資家もステークホルダーも、「それなら応援したい」と思える言葉の力があります。

AI時代に問われるのは、「本質的な課題解決」
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