世界的なインフレの進行を背景に、現在のマーケットでは消費行動の「二極化」がかつてないほど鮮明になっています。
原材料費の高騰などが複合的に絡み合い、あらゆる物価が上昇を続ける中、これまで消費の主役であった中間所得層は、生活防衛のためにシビアなコスト感覚を持つようになりました。なかでも日々の買い物に対しては、徹底した「買い控え」や「低価格志向」へとシフトしています。
一方で、富裕層の消費意欲は依然として旺盛で、非日常を味わえるラグジュアリーな体験や資産価値を伴う高級ブランド品に対する需要は、インフレ下でも衰えを見せていません。むしろ、価格が上がることで希少性やステータスが再評価され、より熱狂的な支持を集めるケースすら見受けられます。
消費が上下に分断するこのような現象は「K字型経済」と呼ばれ、現在、あらゆる産業のビジネスモデルに多大な影響を及ぼしています。中途半端な価格帯・品質の製品は、コスパの良い低価格商品と圧倒的な付加価値を持つ高級ブランド品の板挟みとなり、極めて厳しい戦いを強いられています。
匠の技術で富裕層の心をつかんだセイコー
世の中の消費スタイルが大きく変わる中、株式市場で改めて注目を集めているのがセイコーグループ<8050>です。セイコーといえば、「正確で壊れない実用的な時計」で長年親しまれてきましたが、近年は上下に分かれる消費の波をいち早く捉え、高級路線へのシフトを見事に成功させています。
その代表格が、高級時計ブランド「グランドセイコー(GS)」の大躍進です。アメリカやヨーロッパなどの海外市場を中心に、自社の直営店を増やしたり、現地の高級時計店との結びつきを強めたりして、世界に向けたブランド戦略を推し進めています。SNSを活用した効果的な宣伝と、富裕層向けの高級感ある店舗づくりを組み合わせ、世界におけるブランド価値も、業績も、大きく向上しました。
世界の富裕層を惹きつけているのは、「ロレックス」や「オメガ」といったヨーロッパのブランドにはない、セイコーならではの「日本の美意識」や「職人の技」です。さらに、セイコー独自の仕組みである「スプリングドライブ」が、その価値をしっかりと支えています。