コラム

「医学的な根拠はない」のに、マスクを外せない...「キリシタンの踏絵」と化したコロナ対策の末路

2023年04月28日(金)07時56分

江戸時代と比べて令和のコロナ禍に「進歩」した点があったとすれば、聞かれてもいないのに「私は踏絵を踏んでいます」とわざわざ自らアピールする人士が、SNSのプロフィール写真をマスク姿に変えるなどの形で、続々現われたことくらいだろうか。近代以前と比べても公権力が統治しやすい「よき百姓」たること、この上ない人々である。

マスク着用だけでは飽き足らず、フェイスシールドまで重ね着した自撮り写真で、講義の遠隔配信に邁進する姿を誇った大学教員もいた。これはプロフィール欄に「科学よりも同調圧力に従います」と自分で書くようなもので、さすがに本人も忘れてほしがっている気がするが、卑しくも「歴史学者」ならそうした過去こそを、自ら史料として保存し後世に語り継ぐべきであろう。

かつてそこまでマスクの着用を煽り、違う意見を「キリシタン」のように異端視して弾圧した人々は、世界に無知を晒したいま、きっと恥ずかしい気持ちでいると思う。5類への移行後は、不要にマスクで口元を覆い続ける人を見たら「きっとコロナで騒ぎすぎて、周囲に顔向けできないんだろうね」と、生温かい目線を向けて棄教を促すことが、日本で速やかに脱マスクを実現してゆく道かもしれない。

プロフィール

與那覇 潤

(よなは・じゅん)
評論家。1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科で博士号取得後、2007~17年まで地方公立大学准教授。当時の専門は日本近現代史で、講義録に『中国化する日本』『日本人はなぜ存在するか』。病気と離職の体験を基にした著書に『知性は死なない』『心を病んだらいけないの?』(共著、第19回小林秀雄賞)。直近の同時代史を描く2021年刊の『平成史』を最後に、歴史学者の呼称を放棄した。2022年5月14日に最新刊『過剰可視化社会』(PHP新書)を上梓。

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