コラム

日本企業の海外進出に注目高まる「グローバルサウス諸国と治安リスク」

2025年02月06日(木)12時41分

グローバルサウスに注目する日本企業

一方、今後トランプ政権下で新たな米中対立が予想される中、日本企業の間ではそういった大国間リスクとは距離を置くグローバルサウス諸国への関心が近年強まっているが、グローバルサウス諸国の中にはテロの脅威(差し迫った脅威もあれば潜在的な脅威もある)を抱える国々が少なくなく、グローバルサウスへの開拓強化を目指す日本企業からは治安面での懸念が大きく聞かれる。

ここでは、インドネシア、インド、アフリカ・サヘル地域に絞って紹介したい。


インドネシアのテロ組織の代名詞だったジェマーイスラミアが解散

まず、多くの日本企業が進出する東南アジアで、インドネシアのテロ情勢は大きな転機を迎えた。国内で過去に欧米権益を狙ったテロを繰り返してきたイスラム過激派ジェマーイスラミアは昨年6月末、組織を解散を発表した。

公開したビデオ動画にはジェマーイスラミアの幹部16人が映り、組織を解散し、今後はインドネシア国家に従順し、法令を遵守していくことを宣言した。

解散に至った背景には、組織の中で暴力的な聖戦への関心が集まらなくなったことなどが考えられるが、2002年10月にはバリ島で外国人観光客が集まるナイトディスコを狙った爆弾テロを実行し、200人あまりが死亡した。

死亡者の多くはオーストラリア人だったが、現場にいた日本人2人も犠牲となった。

その後も、2003年8月のジャカルタ・マリオットホテル爆弾テロ(12人死亡、約150人負傷)、2004年9月のジャカルタ・オーストラリア大使館前爆破テロ(9人死亡、約150人負傷)、2005年10月のバリ島・同時爆破テロ(邦人1人を含む23人死亡、約200人負傷)、2009年7月のジャカルタ・マリオットホテル及びリッツカールトンホテル連続爆破テロ(9人死亡、約50人負傷)など欧米人を狙ったテロ事件が相次ぎ、この当時インドネシアは世界的にも1つのテロの震源地だった。

そのジェマーイスラミアが解散を宣言したことは、インドネシアのテロ情勢にとって大きな明るい兆しとなったが、解散という決定に納得がいかないメンバーも存在し、そういったメンバーたちが新たな過激組織を結成する可能性は否定できない。

プロフィール

和田 大樹

CEO, Strategic Intelligence Inc. / 代表取締役社長
専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障、地政学リスクなど。海外研究機関や国内の大学で特任教授や非常勤講師を兼務。また、国内外の企業に対して地政学リスク分野で情報提供を行うインテリジェンス会社の代表を務める。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加州知事を「敗者」と批判 英とエネ協定

ワールド

ウ大統領、ロの大規模攻撃準備を警告 ジュネーブ和平

ワールド

米長官、ハンガリーとの関係「黄金時代」 オルバン氏

ワールド

メキシコとカナダ、鉱物資源・インフラ巡り共同行動計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 2
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 3
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 10
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story