コラム

日本関連スノーデン文書をどう読むか

2017年05月08日(月)15時30分

Marcos Brindicci-REUTERS

<スノーデン文書の中から日本に関連したファイル13本が公開された。日米両国政府が共謀し、日本国民のプライバシーを侵害しようとしている? 私は、日本政府のサイバー防衛のための努力、国を守るための努力だと考えたい>

2017年4月24日、スノーデン文書の中から日本に関連したファイル13本がインターセプトとNHKによって公開された。

スノーデン文書とは、言うまでもなくエドワード・スノーデンが米国国家安全保障局(NSA)から持ち出した文書で、それを受け取ったジャーナリストのグレン・グリーンウォルドらが作ったオンライン・メディアがインターセプトである。

スノーデンが持ち出した文書の全容はいまだわかっていない。スノーデン自身は、NSAの活動に問題があると確信して文書を持ち出し、ジャーナリストたちに渡したが、自分ではその内容を精査する能力を持ち合わせておらず、ジャーナリストたちにいわば「丸投げ」した。彼は今、モスクワに滞在しながら様々なメディアに露出しているが、ファイルそのものは彼の手元にはないとも言っている。

全部のファイルを持っている複数のメディアのうち、今回はインターセプトが見つけた日本関連の13本が公開されたが、他にも日本関連のものが存在するのかどうかは、外部の我々にはわからない。

【参考記事】スノーデンが暴いた米英の「特別な関係」、さらに深まる

13本の文書をどう読むか

13本の文書はそれぞれPDFになっており、短いものばかりである。一番長いものでも3ページしかない。13本中6本は、1ページだけの文書である。本来の文書には画像が入っていたと見られるものがあるが、ほとんどの画像は削除されている。スノーデンが持ち出した文書そのものに画像がなかったのか、インターセプトが削除したのかはわからない。

以下では、文書に付されている日付順に見ていこう。ただし、記載内容は必ずしも年代順になっていない。文書は新しいが、古いことが書いてある場合もある。

第1の文書は、2004年7月21日付になっている。米国はジョージ・W・ブッシュ政権、日本は小泉政権の頃である。この文書はNSAの部内誌「SIDtoday」(SIDはSignals Intelligence Directorate[信号情報部]の略)からの抜粋で、東京にある米軍の横田基地内でNSAのためのエンジニアリング支援施設がオープンし、37万5000ドルの経費のほとんどを日本政府が払ったと記している。もともとこの施設は神奈川県のキャンプ座間にあり、移設されたようだ。この施設で作られたアンテナ等がアフガニスタンでも使われたとしている。

第2の文書は2005年2月24日付けの1枚文書で、これも小泉=ブッシュ時代である。この文書は高周波の電波方向探知のための「クロスヘア(CROSSHAIR)」作戦をオーストラリア、デンマーク、エチオピア、ハンガリー、イスラエル、インド、イタリア、日本、ヨルダン、韓国、オランダ、ノルウェー、パキスタン、サウジアラビア、スウェーデン、台湾が支援していると述べている。作戦は1993年から始まっており、冷戦後、不安定化する国際情勢の中で米国の電波傍受に各国が協力していることを示しており、「サード・パーティーの協力なくして世界規模の米国の高周波方向探知ネットワークを持つことはおそらくできないだろう」という作戦担当者の言葉を引用している。サード・パーティーとは、米英豪加ニュージーランドのファイブ・アイズに入っていない米国の友好国のことである。

プロフィール

土屋大洋

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。国際大学グローバル・コミュニティセンター主任研究員などを経て2011年より現職。主な著書に『サイバーテロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀 国家を揺るがすサイバーテロリズム』(角川新書、2016年)などがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:日銀1月までに利上げ、高市政権でも容

ワールド

ノーベル化学賞に北川進京大特別教授ら3人、金属有機

ワールド

ロ、トマホーク供与をけん制 米への報復検討と有力議

ビジネス

最貧国の債務問題、革新的な解決策が必要=イタリア中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女性を襲った「まさかの事件」に警察官たちも爆笑
  • 4
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    ヒゲワシの巣で「貴重なお宝」を次々発見...700年前…
  • 8
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 9
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story