コラム

現代の模範村、中国・烏鎮(ウーチン)で開かれた世界インターネット大会

2018年11月14日(水)16時50分

中国・烏鎮で開催された第5回世界インターネット大会 撮影:土屋大洋

<2014年から中国・烏鎮で開催されてきた世界インターネット大会の5回目が開かれた。集団的ガバナンス=集体治理を主張する中国の意図とは......>

1964年の中国で「農業は大寨に学べ」というスローガンが叫ばれたことがあった。山西省にあった村・大寨(ダイサイ)が毛沢東時代の模範村として位置づけられて宣伝に使われたのだ。

上海から車で2時間走ったところにある浙江省の烏鎮(ウーチン)を訪ねたとき、中国の理想とする農村はこういうところなのかと目を見張った。道の両側に田畑がきれいに整備され、作物が豊かに実り、花が咲き乱れている。11月初旬で肌寒いのに、稲はさほど実っておらず、キャベツなどの野菜も青々として整然と並んでいるところが人工的に作られている印象を与えるが、全体によく整備されている。「村委会(村民委員会)」と書かれた建物やレストラン、宿屋などもある。

もともと烏鎮は水郷の里として知られていて、中国のベネチアとも呼ばれる。今はその歴史的建造物が残る部分が一種のテーマパークになっており、150元(約2500円)で見学できるようになっている。内部には民宿も整備されていて、川沿いに並ぶ中国の昔ながらの建物に宿泊することができる。

IMG_6822d.JPG

中国人のノスタルジーを刺激する昔ながらの風景を示すとともに、全体によく整備されている

IMG_7146e.JPG

中国のベネチアとも呼ばれる烏鎮

第5回世界インターネット大会

ふだんは観光客でごった返すという烏鎮だが、11月7日は観光客が締め出された。土産物屋やレストランは閑散としており、従業員は暇そうにスマホをいじっている。村を歩く人たちのほとんどは首から青いネームタグをぶら下げており、村のあちこちに青い制服を来た若い女性たちが案内に立っている。

この日、隣接する国際会議場・烏鎮互連網国際会展中心で世界インターネット大会(烏鎮サミット)が開幕式を迎えた。第1回が2014年に開かれ、今年が5回目である。第1回開幕時にはなかったという烏鎮互連網国際会展中心だが、第2回からは烏鎮サミットの恒久的な開催場として定められたという。「恒久的っていつまでやるつもりなんだ」と隣にいた中国人に聞くと、「まあ、中国は政権が変わるといろいろ変わるから」と苦笑いしていた。

プロフィール

土屋大洋

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。国際大学グローバル・コミュニティセンター主任研究員などを経て2011年より現職。主な著書に『サイバーテロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀 国家を揺るがすサイバーテロリズム』(角川新書、2016年)などがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ハンガリー首相と電話会談 米ロ首脳会談

ビジネス

HSBC、金価格予想を上方修正 26年に5000ド

ビジネス

英中銀ピル氏、利下げは緩やかなペースで 物価圧力を

ワールド

米ロ首脳会談、2週間以内に実現も 多くの調整必要=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 7
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story