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韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち

2026年1月13日(火)20時42分
佐々木和義

ソウル市内のカルグクス専門店「ホイシク」

日本人無料キャンペーンを行なっているソウル市内のカルグクス専門店「ホイシク」(撮影=筆者)

拡大する日本人無料キャンペーン

日本人への無料キャンペーンは、このように当初は観光公社や自治体が主催する地方観光が主流だったが、コロナ禍以降、民間事業者が参入し、さまざまな業態に広がった。韓国料理店や韓国人が経営する日本料理店、化粧品店、ホテル、美容整形などがある。

飲食店や化粧品店はサービス上限額を設定して超過分は自己負担とするものが多く、ホテルは1泊のみ無料で、連泊では2泊目以降が自己負担となる。美容整形は指定した複数の施術のうち、1つの施術を無料で提供する方式が主流となっている。

日本大使館に在留届を提出している日本人は約4万人、その6割以上がソウルとその近郊に集中する。こうした首都圏在住日本人から訪韓日本人観光客に発信してもらう無料キャンペーンだが、受け入れ体制が整っていない観光地や実施店も少なくない。

キャンペーンの陰に隠れたリスク

まずは交通アクセスだ。韓国の鉄道は大半の駅施設に日本語表記があり、ハングルを読めない日本人も容易に利用できるが、ソウルと地方都市を結ぶ鉄道路線は貧弱で地方への移動は高速バスが一般的だ。ソウル市内の長距離バスターミナルには券売機や構内などに日本語があるものの、地方は韓国語表記のみというターミナルが多く、日本語を理解する職員は皆無に等しい。地方のバスターミナルで日本人旅行者と職員が言葉が通じず、双方とも困り果てている場面に遭遇したことがある。

公社や自治体が企画する日本人無料ツアーは主催者が移動手段を手配し、訪問先では現地在住日本人や日本語ガイドが案内するが、個人旅行者がガイドを依頼できるケースは稀で、韓国語でコミュニケーションができない個人旅行者は途方に暮れることになりかねない。

ソウルの飲食店も同様だ。看板やメニューなどに韓国語表記しかなく、日本語を話す店員が皆無という状態なのに、日本人無料を実施する韓国料理店もある。飲食店は言葉が通じなくても大きなトラブルは少ないが、整形外科は問題だ。

日本人無料を実施する整形外科は日本語通訳を用意するとはいえ、専門用語が多い医療機関で正確に伝えることができる通訳者は少なく、誤訳が深刻な事態を引き起こす可能性が排除できない。

韓国の日本人無料サービスは、SNSマーケティングを活用するいまどきのプロモーション方法といえるが、地方や医療分野など受け入れ体制が不十分な地域や施設もあり、情報を参照する利用者の安全面などに不安が残る。SNSを参照した利用者はもとより、サービスを提供する側もリスクを負う可能性がある。

SNSを通じた口コミは瞬時に拡散する時代である。受け入れ体制が不十分なまま無料サービスを提供すれば、好意的な発信どころか、トラブルの拡散装置となりかねない。日本人無料サービスが韓国観光の魅力を高めるツールとして機能するのか、それとも信頼を損なう諸刃の剣となるのか。その分岐点は、事業者がどれだけ真摯に受け入れ体制を整備できるかにかかっている。


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