「お父さんの部屋から異臭がする」...検視官が見た「他人事じゃない」不審死の現場
「死について語れる社会」を目指したいという願い
第三者はつい「娘が怪しい」などと勘ぐりたくなるかもしれない。しかし、事実はそれほどドラマティックではなく、想像以上に生々しいものなのだろう。
到着した私たちも、署員と一緒に妻と娘から説明を聞きながら、死者の部屋につながる襖を開けてみました。すると、ゴミの山の間から緑色に変色した足が見えてきました。さらに近づくと、ウジがわき腐敗臭が漂い始めた遺体と対面したのです。(78ページより)
想像したくない光景だが、ここには目を背けるべきでない重要なポイントがある。決して他人事ではなく、誰しもいつ死ぬか分からないということだ。できれば家族など大切な人に看取られながら穏やかに死んでいきたいものではあるけれど、そうはいかないかもしれない。
なんらかの理由があってひとりで死んでいくことになり、死後1週間くらい誰にも気づかれないこともありうるのだ。
本書の執筆目的は、主に3つあるのだという。
第一は、「防げたかもしれない死」を少しでも減らしたいという思い。第二は、検視という業務の存在と、その重要性を広く知ってほしいということ。そして第三は、「死について語れる社会」を目指したいという願い。
誰もが安心して死を迎えられる社会にするためには、死や遺体について語ることを忌避せず、開かれた議論を持つことが欠かせません。死に関心を持ち正面から向き合える社会は、きっと生にも優しい社会になるはずです。(239ページより)
まさしく、生と死はつながっているものなのだ。

『検視官の現場――遺体が語る多死社会・日本のリアル』
山形真紀・著
中公新書ラクレ
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
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