最新記事
日韓関係

韓国で「ふくしま」への警戒感払拭? ソウル「日韓交流おまつり」で見た市民感情の変化

2025年10月23日(木)11時25分
佐々木和義

「赤べこ」の絵付け体験

復興庁ブースでの「赤べこ」の絵付け体験(筆者撮影)

「ふくしま」のイメージが1年で大きく変化

震災から5年が経過した2016年以降、アジア各国を中心に規制緩和や撤廃の動きが広がった。2023年にはEUが撤廃し、今年8月には台湾も撤廃の方針を示している。2011年以降に日本産食品の輸入規制を行った53カ国・地域のうち、49カ国・地域が解除しており、台湾が解除すると規制を継続するのは中国、韓国、ロシアのみとなる。

一方で、韓国国民の「ふくしま」に対するイメージはこの1年で大きく変化したようだ。昨年の日韓交流おまつりではソウル福島県人会が福島産日本酒の試飲を実施、好奇心や一部に警戒心も見られたが、今年は警戒心等を抱く様子は見られず、購入先を尋ねる来場者もいたほどだった。

韓国政府にも変化の兆しか?

福島観光にも変化が現れている。韓国外交部は日本に入国した韓国人の携帯電話に向けて「福島」に近寄らないよう警告するメッセージを発信していたが、現在は危急の用事がない場合「福島原発半径30km以内および日本政府指定避難指示区域」への旅行中止・延期を促す内容となっており、警告区域が福島県から原発近隣に縮小されている。

復興庁ブースを訪れた来場者の中には、福島への行き方や見どころ、郷土料理などを尋ねる人々もいた。日韓交流おまつりへの来場者だけに当然日本に好意的な韓国人が大半を占めるとはいえ、福島に対する嫌悪や警戒心はほぼなくなったと言えそうだ。

ある外務省職員は、韓国が福島を含む日本産食品の輸入を規制する客観的な理由はなく、韓国政府の対日外交カードの一つだろうと分析する。復興庁は11月にソウルで開催されるトラベルショーにも出展して福島観光を紹介することが決まっており、続いてソウル市内で福島の食プロモーションを検討したい考えだ。

科学的根拠に基づく国際的な規制緩和の流れと福島に対する市民感情の変化が進むなか、韓国政府はいつまで規制を続けるのだろうか。一日も早い規制解除に期待したい。

投資
「FXで長期投資」という投資の新たな選択肢 トライオートFX「世界通貨セレクト」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、EUが凍結資産を接収すれば「痛みを伴う対応

ビジネス

英国フルタイム賃金の伸び4.3%、コロナ禍後で最低

ビジネス

ユニリーバ、第3四半期売上高が予想上回る 北米でヘ

ワールド

「トランプ氏は政敵を標的」と過半数認識、分断懸念も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中