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日韓関係

韓国で「ふくしま」への警戒感払拭? ソウル「日韓交流おまつり」で見た市民感情の変化

2025年10月23日(木)11時25分
佐々木和義

「日韓交流おまつり」の復興庁ブース

福島県産の日本酒が振る舞われた「日韓交流おまつり」の復興庁ブース(筆者撮影)

福島第一原発事故にいち早く日本産食品の輸入規制を実施

2011年3月、東日本大震災に伴って福島第一原子力発電所で事故が発生すると韓国政府はいち早く日本産食品の輸入規制を実施した。福島県を含む13都県で生産された食品については、日本政府発行の放射性物質検査証明書の提出を義務付け、それ以外の地域の食品は製造地証明書の提出を義務付けた。さらに日本産食品が韓国の港湾に到着次第、韓国政府が放射能検査を実施する体制を整えた。

当時、日本には政府機関が輸出食品の放射能検査や原産地証明を発行する制度はなく、いずれも商工会議所が担っていた。韓国政府が商工会議所の証明書を認めなかったことから、日本政府が制度を整えるまでの2〜3カ月間、日本産食品の輸入が全面的に停止した。既に日本の港を出港していた食品も大多数が対象となり、返送か廃棄を余儀なくされたほどだった。

日本産食品が唯一安全!?

さらに韓国政府は、食品に含まれる放射性物質の基準を世界で最も厳しい日本と同レベルまで引き下げた。日本産食品は日韓で二重の検査体制となる一方、日本産以外の食品は検査を実施しないダブルスタンダードの体制だった。

ある韓国企業が欧州から食品を輸入した際、一部は欧州から直接輸送、一部は神戸港を経由した。検査が行われない直接輸送分は問題なく輸入できたが、神戸港を経由した食品は放射能検査が行われ、韓国の基準を上回る放射能が検出されて輸入許可が下りなかったという。いずれも同じ工場で同時期に製造された食品で、輸送経路以外に違いはない。

韓国政府が放射能検査を行なっているのは事実上、日本産食品と日本を経由した食品であり、日本以外の輸入食品や韓国産食品の検査はほとんど行われていない。その意味では放射能に関してはむしろ日本産食品が唯一、安全といえるのかもしれない。

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