最新記事
南アジア

バングラデシュの悪夢──ハシナ政権の崩壊後1年、軍と過激派が支配し経済も破綻の危機

A SOUTH ASIAN TIME BOMB

2025年8月19日(火)09時48分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)
バングラデシュの悪夢──ハシナの崩壊後1年、軍と過激派が支配し経済も破綻の危機

バングラデシュで昨年7月に起きた革命の直後、人々は体制の崩壊を祝っていたが、、、 zakir1346 -shutterstock-

<幻想は、ムハマド・ユヌスの登場でさらに広がった...ハシナ前首相の失脚から1年。民主化への期待は裏切られ、バングラデシュは軍とイスラム過激派の連合が支配する無法状態に陥った>

バングラデシュは昨年夏のハシナ政権の崩壊から1年を経て、大混乱に陥っている。経済は危機的な状況にあり、イスラム過激派が勢力を拡大。若者の過激化が進み、無法状態が広がり、宗教・民族的少数派は追い詰められている。この国の将来が今ほど暗く見えたことはない。

強権を振るった「鉄の女」ハシナ前首相がインドに脱出せざるを得なくなったとき、多くの国民は民主化への移行に期待をかけた。多数の死者を出した騒乱を経たとはいえ、これは学生主導の蜂起が政権を倒したのだと理解することもできた。


しかし、実態は違う。ハシナの排除には、彼女の下で影響力をそがれたことにいら立っていた軍部が決定的な役割を担っていた。同じく学生たちに力を貸したイスラム主義勢力も、ハシナの世俗的な支配の下で政治的に周縁に追いやられていた状況を終わらせる好機と見なした。

ハシナ失脚に伴う幻想は、ムハマド・ユヌスの登場でさらに広がった。

彼は貧困層に低利・無担保で少額の融資を行うグラミン銀行を創設し、2006年にノーベル平和賞を受賞した人物。ハシナ失脚を受けて発足した暫定政権の首席顧問にユヌスが就任したことで期待が高まったものの、それも幻想にすぎなかった。ユヌスの起用には、西側諸国の政治的思惑が絡んでいたことも明らかになっている。

東京アメリカンクラブ
一夜限りのきらめく晩餐会──東京アメリカンクラブで過ごす、贅沢と支援の夜
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

年初からの訪タイ観光客、前年比7.04%減

ワールド

マクロスコープ:自民の一部に「高市総裁」期待の声、

ワールド

台湾「安全保障は自ら守る」、中国の侵攻巡るトランプ

ワールド

自民、総裁選前倒し是非で議論開始 「スピード感大事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中