最新記事
コメ騒動

コメ価格暴騰で悲鳴の日本に救世主? 韓国米、史上初の対日輸出の舞台裏

2025年7月11日(金)11時42分
佐々木和義

韓国の大手スーパーの特売コーナーに並べられたお米

韓国ソウル市内の大手スーパーEマートの特売コーナーに並べられたお米は10キロで39,900ウォン(約4,256円)。韓国ではこのように10キロ単位での販売が主流だ(撮影=筆者)

日本と似ている韓国のコメ事情

韓国政府も03年から06年まで減反政策を実施したが、成果があったとは言い難い。転作農家にインセンティブを与える緩い政策にすぎなかった。

韓国のコメは日本と同じ短粒種のジャポニカ米で、稲作は日本と同様、主に小規模農家が担っている。集荷や流通に農協が関与し、政府も強く介入する。コメを基幹食糧と位置付けて高い関税障壁を設けるなど国内市場を保護するほか、需給管理も行っている点も日本の政策に近い。

22年時点で韓国農家の51.9%が稲作を行い、作付け面積も農耕地全体の47.6%を占めている。コメは政府と農協によって価格が維持されており、野菜と違って価格が暴落する危険はない。また機械化率が高く、手慣れた稲作は農家にとって負担が少ない。

農家の高齢化も減反にブレーキをかける。あと何年、農業を続けられるか不安をいだくなか、新たな農機具の導入を伴う転作に二の足を踏む高齢農家が少なくないのだ。

余剰米に加えて輸入米まで

さらに輸入米が拍車をかける。韓国政府は2015年以降、関税化の引き替えとして年間40万8000トンのコメ輸入が義務付けられている。

2023年の消費量392.4万トンに対し、生産量は370.2万トンで輸入量は40.8万トン。単純計算で余剰米は18.6万トンとなるが、消費量には前年の生産分を含んでおり、政府は公共備蓄米として39万トン、隔離穀として20万トンを買い入れた。

韓国政府は2014年から23年までの10年間、隔離穀の買い入れに4兆1000億ウォンを支出した。余剰米は3年程度、保管した後、酒精用や飼料用として売却されるが、買い取り額を下回るうえ、保管費用も小さくない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

海自と米海軍が共同訓練、空母ジョージ・ワシントンが

ビジネス

日銀、中立金利の推計公表しない見通し 利上げは経済

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、景気敏感株に物色 トヨタ自

ビジネス

日鉄が中期計画、30年度に実力利益1兆円以上 設備
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中