最新記事
デンマーク

「平和の国」がいま武装する理由──デンマーク首相フレデリクセン、激動の世界を語る【本誌独占インタビュー】

CAUGHT IN THE CROSSFIRE

2025年7月3日(木)15時26分
マシュー・トステビン(本誌シニアエディター)

>難民の受け入れを求める2016年のデモ。デンマークは移民に厳格な政策で知られる

難民の受け入れを求める2016年のデモ。デンマークは移民に厳格な政策で知られる FRÉDÉRIC SOLTANーCORBIS/GETTY IMAGES

フレデリクセンは言葉を慎重に選んでいた。青い目に鋼のような意志を宿し、時に思慮深げな笑みを浮かべ、彼女は自分が育った世界を脅かす危機について語った。その世界とはアメリカが第2次大戦で果たした役割と、その後の冷戦期にソ連に対抗したことに、デンマークが感謝の気持ちを抱き続けた頃の世界だ。

グリーンランドの住民はデンマークからの完全独立を望んでいるが、アメリカによる支配には反対している。

「同盟国同士が攻撃し合うような事態は、完全に間違っている。デンマークとの関係だけでなく、大西洋を挟んだヨーロッパとアメリカの関係に亀裂が入ることになる。全ての国にとって非常に危険だ」


トランプはロシアや中国との対立が激化した場合、デンマークにグリーンランドを防衛する能力があるのかと疑問を呈している。これに対してフレデリクセンは、他のNATO諸国と協力して北極圏での防衛能力を強化し、東ヨーロッパの防衛にもより積極的に関与すると述べた。

ロシアを「自力」で抑止する

トランプがヨーロッパに課した関税も、貿易不均衡を是正するための措置とはいえ、アメリカとの摩擦の火種となっている。EU加盟国であるデンマークには、アメリカと個別に貿易交渉を行う権限はない。

「貿易戦争はヨーロッパだけでなく、誰にとっても頭痛の種になると思う。だから今、私たちはそれを避けるためにあらゆる手立てを講じている」と、フレデリクセンは言う。

「そうでなくとも世界には困難な問題が山ほどあり、事態は悪いほうに動いている。私はアメリカの友人たち(政権幹部ら)に、そう訴えている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー経済に回復の兆し、来年度3%成長へ 世銀

ワールド

ハマス武装解除よりガザ統治優先すべき、停戦巡りトル

ビジネス

米ロビンフッド、インドネシアに参入 証券会社と仮想

ワールド

イタリア、25年成長率予想を0.5%に下方修正 2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中