「平和の国」がいま武装する理由──デンマーク首相フレデリクセン、激動の世界を語る【本誌独占インタビュー】
CAUGHT IN THE CROSSFIRE

フレデリクセンは言葉を慎重に選んでいた。青い目に鋼のような意志を宿し、時に思慮深げな笑みを浮かべ、彼女は自分が育った世界を脅かす危機について語った。その世界とはアメリカが第2次大戦で果たした役割と、その後の冷戦期にソ連に対抗したことに、デンマークが感謝の気持ちを抱き続けた頃の世界だ。
グリーンランドの住民はデンマークからの完全独立を望んでいるが、アメリカによる支配には反対している。
「同盟国同士が攻撃し合うような事態は、完全に間違っている。デンマークとの関係だけでなく、大西洋を挟んだヨーロッパとアメリカの関係に亀裂が入ることになる。全ての国にとって非常に危険だ」
トランプはロシアや中国との対立が激化した場合、デンマークにグリーンランドを防衛する能力があるのかと疑問を呈している。これに対してフレデリクセンは、他のNATO諸国と協力して北極圏での防衛能力を強化し、東ヨーロッパの防衛にもより積極的に関与すると述べた。
ロシアを「自力」で抑止する
トランプがヨーロッパに課した関税も、貿易不均衡を是正するための措置とはいえ、アメリカとの摩擦の火種となっている。EU加盟国であるデンマークには、アメリカと個別に貿易交渉を行う権限はない。
「貿易戦争はヨーロッパだけでなく、誰にとっても頭痛の種になると思う。だから今、私たちはそれを避けるためにあらゆる手立てを講じている」と、フレデリクセンは言う。
「そうでなくとも世界には困難な問題が山ほどあり、事態は悪いほうに動いている。私はアメリカの友人たち(政権幹部ら)に、そう訴えている」





