最新記事
韓国大統領選

韓国次期大統領の有力候補者イ・ジェミョンのコンセプト「木鷄之徳」って何?

2025年5月26日(月)18時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

イ・ジェミョンのリーダーシップ変革

イ・ジェミョン候補は自身が「辺境の将帥」と称し、中央政治と角を立てながら成長してきた経緯から、攻撃的で独善的なイメージが付きまとってきた。この「非好感」の克服が課題とされていた。

イ候補の選挙戦のコンセプトは、単に柔和なイメージへの転換ではなく、「強力なカリスマを維持しつつも平穏さを持たせ、その権威をさらに強化する」方針だという。表面的には落ち着いた余裕を見せながらも、必要な時には内的な強さを発揮するリーダー像を追求している。

マーケターA氏は「木鶏之徳」と「泰然自若」という四字熟語をイ候補の核心コンセプトとして提案した理由について、「イ候補は強力なカリスマを持っている人物だ。これを肯定的に活用しようと考えた。あえて気を張らなくても、人々が彼の存在自体を意識できないほど平穏に過ごしているが、その権威がはるかに強くなる方式だ。勢いのない勢いに相手が自滅することを意味する」と説明している。

個人的変化の反映

民主党内では、このコンセプト設定が単なるイメージ戦略を超えて、イ候補自身の内面的な変化を反映しているという見方もある。政治的危機(公職選挙法違反での裁判)や身の危険(カッターナイフでの襲撃事件)、そして非常戒厳状態までを経験したイ候補が、「死の峠を何度も越え、ある瞬間、世の中のことに超然となった」という評価がある。

これらの経験を通じて、イ候補は古典に描かれる「木鶏」のような精神状態──外部の刺激に動じず、内面の強さと平静さを保ち続ける境地──を目指しているとされる。それは単なる政治戦略を超えた、深い哲学的変容を示唆している。

マーケターのA氏自身も、この取り組みは単なる選挙戦略を超えた価値観の共有だと語る。「進歩は継続して新しさを追求し変化を追求しなければならないが、それが当然のことになった瞬間、新しさや変化とは距離が遠くなる」という彼の考えは、イ候補の政治姿勢と共鳴している可能性があるという。

イ候補の選挙戦略は、マーケティング手法の導入と東洋哲学の融合という点で、韓国政治に新たなアプローチを提示している。今後、これらが選挙戦だけでなく、イ候補が選挙を勝ち抜いた際に実際の政策やリーダーシップにどう反映されるかも含めて注目されるところだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 6
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 7
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 8
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中