最新記事
国際援助

トランプ再登板で米国の影響力は減退、中国を「世界のリーダー」に押し上げる?

“AMERICA FIRST” IN ACTION

2025年2月10日(月)18時43分
ピーター・シンガー(米プリンストン大学名誉教授・生命倫理学)

国連は裕福な国々について、国民総所得(GNI)の0.7%を対外援助に充てるという目標を掲げている。

しかし2023年にこの基準を超えたのはノルウェー、ルクセンブルク、スウェーデン、ドイツ、デンマークの5カ国のみ。アメリカの対外援助はGNIのわずか0.24%だった。

WHO脱退にも、さほどの節約効果はない。WHOの年間予算は、米ロードアイランド州(人口約110万人)の保健関連支出の半分程度しかなく、しかもアメリカの拠出額はその約15%にすぎない。


アメリカのWHO脱退により、健康に関する問題での国際協力は大幅に減るだろう。米保健当局は、国外の疾病流行状況に関する情報を得にくくなる恐れがある。

一方で、アメリカのWHO脱退は外国の製薬会社を利するかもしれない。アメリカは新薬の効果や安全性、品質基準に関するWHOの議論に発言権を失うからだ。

トランプによる一連の動きの中で最も壊滅的な影響をもたらすのは、気候変動に関わるものだろう。石油やガスの増産推進、電気自動車(EV)に対する税額控除の廃止、そして何よりパリ協定からの離脱だ。

アメリカの1人当たりの温室効果ガス排出量は中国より50%多く、インドの7倍近い。これらの国は今後、アメリカが気候変動に関する国際的な目標に縛られないのだから、より貧しい自国経済が化石燃料を手放す理由はないと主張できる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、10月は50 輸出受注が4カ

ビジネス

独製造業PMI、10月改定49.6 生産減速

ワールド

高市首相との会談「普通のこと」、台湾代表 中国批判
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中