最新記事
南シナ海

南シナ海、米比合同演習の周囲を埋め尽くす中国船が見えた

Chinese Vessels Detected Massing Near US-Led Military Exercise

2024年4月25日(木)18時08分
マイカ・マッカートニー
米比合同演習に先駆け、東シナ海では日米韓の共同訓練が行われた

米比合同演習に先駆け、東シナ海では日米韓の共同訓練が行われた(4月11日)  ABACA via Reuters Connect

<海軍力を見せつけるためか、海警局や「海上民兵」の艦船が何十隻も繰り出している>

南シナ海の係争海域に今、中国船がどっと集結している。アメリカと同盟国のフィリピンが実施している年次合同演習の一環である洋上訓練をにらんでの動きとみられ、中国海警局の艦船に加え、武装した中国漁船など「海上民兵」の船舶も続々とこの海域に押し寄せている。

【再現動画】東・南シナ海で中国機がカナダ機と豪機に仕掛けた危険な嫌がらせ

南沙(スプラトリー)諸島の「セカンド・トーマス礁/ミスチーフ礁周辺に今日は恐ろしく多くの船がひしめいている」──4月23日にX(旧ツイッター)にそう投稿したのは、米スタンフォード大学のプロジェクト「シーライト」を率いるレイ・パウエルだ。シーライトは中国海軍のグレーゾーン活動(領海侵犯など平時と戦時の中間に位置する準軍事活動)を監視・分析するプロジェクト。リアルタイムの船舶追跡データに基いてパウエルが作成・投稿したマップは、南シナ海の環礁や岩礁の周りが中国船でほぼ埋め尽くされていることを示している。

セカンド・トーマス礁とミスチーフ礁はいずれも国際的に承認されたフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置している。南シナ海のほぼ全域を自国の領海と主張する中国は、ミスチーフ礁を埋め立てて軍事基地を建設。ここを拠点に、近くのセカンド・トーマス礁に物資を輸送するフィリピン船の航行をたびたび妨害している。

スカボロー礁周辺にも集結

mapsouthching.jpg

「バリカタン」(タガログ語で「肩を並べて」という意味)と名付けられた恒例の米比合同演習は今年、南沙諸島に近いフィリピン・パラワン州の島を中心に洋上訓練が行われている。

南沙諸島の環礁周辺に集結した中国船は現在、中国の船舶自動識別システムで明らかに特定できる状態になっている。自国の海軍力を誇示しようとする中国政府の意図がそこに透けて見えると、パウエルは本誌に語った。

パウエルによると、南シナ海では中国海警局と海上民兵の船舶が「ここ1カ月非常に増えていた」が、先週は船舶の交代時期に当たったため、その数がさらに急増。だが、その後も通常レベルに戻る様子はないという。

「これは米比の合同演習に対抗するための誇示行動と思われる」と、パウエルは言う。「もっとも中国は近年フィリピンが進めている水路測量プロジェクトにも警戒を募らせている上、フィリピンが実効支配するセカンド・トーマス礁への物資輸送にも引き続き神経を尖らせている」

本誌はフィリピン軍と中国外務省にメールでコメントを求めている

4月23日には、シーライトのデータで、セカンド・トーマス礁の北東に位置する、やはり領有権でもめているスカボロー礁周辺にも中国船が集結していることが確認された。スカボロー礁もフィリピンのEEZ内にあるが、中国は2012年にこの環礁を奪い、今年2月には中国の小型船がフィリピン漁船を締め出すために障壁を設置する様子が確認されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに大規

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中