最新記事
2024米大統領選

「ルールなき世界」への転落を目前に、老人同士が座を争う「最後の機会」を見届ける...私たちは民主主義を救えるか?

ISSUES 2024: MAKING OR BREAKING DEMOCRACY

2023年12月28日(木)11時50分
マイケル・イグナティエフ(歴史家)

ウクライナを見捨てる可能性

内政の混乱も同盟諸国には頭痛のタネだ。深刻な党派対立による政治の停滞は、国外における力の行使にも不確実性をもたらしている。

今のアメリカの政治システムは病んでおり、それがアメリカ外交にどう影響するかは予測しにくい。何しろ今は下院共和党の一握りの強硬派議員が、ウクライナへの軍事支援に必要な資金の拠出を止めることもできる。こんな状況では誰も、対ロシア戦へのアメリカの長期的な関与を確信できない。

歴史を振り返れば、ベトナム戦争を戦っていたアメリカは1968年のテト攻勢で甚大な損害を被ったのを機に、和平の模索へと舵を切り、当時の南ベトナム政府を見捨てたのだった。

選挙の年には何があるか分からないから、議会でウクライナ支援への支持が増える可能性もあるが、その逆も十分にあり得る。

後者であれば、ウクライナに対する月額10億ドル超の財政・軍事支援が止まる。そうなったらウクライナは、奪われた領土を回復できないまま、和平に応じざるを得なくなる。

そしてロシア(とその背後にいる中国)は、武力でヨーロッパ大陸の国境線を書き換えたという実績を誇れることになる。

欧州の未来が懸かっている

アメリカが抜けた穴を、ヨーロッパ諸国だけで埋めることはできない。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は防衛力強化によるヨーロッパの「戦略的自律」を唱えているが、その実現は遠い先の話だ。

もしもバイデン政権が議会の支持を取り付けられなければ、ウクライナへの支援は止まる。仮にトランプがホワイトハウスに戻れば、きっとゼレンスキーに敗北を認めろと迫る。

かつての古代ローマ帝国は、宿敵カルタゴを度重なる戦争で痛め付け、和平を結ぶたびにその主権と領土を奪い、ついには壊滅させた。同じことが、ロシアとウクライナの間で起きたらどうなるか。

ヨーロッパ全体が、もう安心して眠れなくなる。なぜなら、それはヨーロッパが史上初めて、ロシアと中国の牛耳るユーラシア同盟に屈することを意味するからだ。

最悪のシナリオだ。しかし、このシナリオを回避する道はある。まずアメリカ人が、ヨーロッパの安全はアメリカの死活的に重要な国益であることを思い出すべきだ。

そしてヨーロッパの人がアメリカの約束する安全保障へのただ乗りをやめ、自らの軍事力強化に取り組むことも必要だ。ヨーロッパの未来はウクライナの運命に懸かっている。この点を忘れてはならない。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界秩序は変化「断絶ではない」、ECB総裁が加首相

ビジネス

シティ、3月も人員削減へ 1月の1000人削減後=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月速報値51.5で横ばい 価

ビジネス

グリーン英中銀委員、インフレ圧力や賃金上昇指標を依
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中