最新記事

東南アジア

インドネシア、クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か

2023年2月3日(金)16時40分
大塚智彦

SOE ZEYA TUN - REUTERS

<ASEAN議長であり、かつて民主化の道を歩んだ国がミャンマー問題を解決しに動き出した>

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は2月2日、膠着状態に陥っているミャンマー問題への打開の道筋を探るために近くインドネシア軍の将軍クラスをミャンマーに派遣する方針をロイター通信とのインタビューの中で明らかにした。

インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙いがある。

インドネシアは2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であることや2021年2月1日のクーデター発生を受けて同年4月に首都ジャカルタでASEAN緊急首脳会議を開催するなど、ミャンマー問題に積極的に関わって来たことも今回の動きの背景にある。

変革に関係した将軍を派遣へ

ジョコ・ウィドド大統領は「将軍派遣」に関して具体的な日程や派遣する将軍の人選に関しては明らかにしなかったが、陸軍幹部で第6代大統領だったスシロ・バンバン・ユドヨノ氏、ジョコ・ウィドド大統領と親しいアンディカ・プルカサ前国軍司令官、プラボウォ・スビアント国防相などの名前が取り沙汰されている。

しかしジョコ・ウィドド大統領がインタビューの中で「インドネシアの(民主化という)変革に関与した人物」を想定していると述べたことから1998年以降のインドネシア民主化に関わった軍人である可能性が高く、国防相や政治・法務・治安担当の調整相も歴任したウィラント元国軍司令官の可能性も浮上している。

ウィラント氏は1998年当時の国軍司令官だったが、国民の民主化を求める運動が高まるなかでスハルト大統領に「大統領辞任」を促しそれが結局大統領職に拘り続けていたスハルト大統領に「引導を渡した」結果となった経緯がある。

大統領自身のミャンマー訪問に含み

ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている。

ミャンマーにはクーデター以降ASEAN加盟国の首脳クラスとしては2022年の議長国だったカンボジアのフンセン首相が首都ヤンゴンを訪れミン・アウン・フライン国軍司令官と首脳会談を行ったことがある。

さらに外相クラスでは2021年の議長国ブルネイのエルワン第2外相がASEAN特使として、さらに2022年に同じくASEAN特使だったカンボジアのプラク・ソコン外相などがヤンゴンを訪問し事態打開策を協議している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中