最新記事

イラク

イラク総選挙、最大の敗者はイランだった

Iran Is the Biggest Loser

2021年10月18日(月)16時30分
ミナ・アル・オライビ(UAEの英字紙ザ・ナショナル編集主幹)

11日の暫定結果発表を受け、サドルはテレビで改革と反腐敗に重点を置いて演説し、自身の政党連合の勝利を「民兵組織に対する勝利」と位置付けた。

アメリカなどの外国勢力に対しても、イラク内政に干渉しない限り、外国の大使館のイラク国内での活動を歓迎すると発言。民兵組織に対する締め付けを強化する可能性も示唆した。「今後、武器は全て政府の管理下に置くものとする」

こうしたイラク政府の権力強化は武力衝突につながりかねない。民兵組織が自分たちの影響力が低下していると見なせば、なおさらだ。

既に一部の民兵組織は、選挙結果を受け入れない姿勢を示唆している。

イラクの今後は、こうした暴力的な脅しに、治安部隊と各政党がどう対処するかに大きく左右されるだろう。民兵組織の攻撃能力を制限しなければ、選挙プロセスだけでなく、治安と統治もダメージを受けかねない。

結局は現首相が続投?

民兵組織の脅しを別にすると、今後のイラク政治の焦点は、連立政権がどのような形になるかによる。大衆の目に見えないところで、さまざまなグループの間で駆け引きが繰り広げられるだろう。

サドルはクルド人勢力と手を組むとともに、議会最大のスンニ派政党で、モハメド・ハルブシ国会議長率いる進歩党と連立を組む見通しだ。それでも過半数の議席は確保できないから、さらなる連立相手を見つける必要がある。

今回の選挙の重要な結果の1つは、国民に直接働き掛け当選を果たした独立系議員のグループが登場したことだろう。これは選挙法の改正によって可能になったものだ。

薬剤師のアラー・アル・リカビ(2019年10月の反政府デモで知られるようになった)が率いる独立系議員のグループ「イムティダド運動」は、10議席を獲得したようだ。

彼らは連立に加わって、旧来型の政治プロセスに染まるリスクを冒すか、それに反対する国民の声として独立を貫き、純粋だが政治的には無力であり続けるかの選択を迫られるだろう。

次期首相を誰にするかをめぐり、サドルが連立相手と合意できなければ、ムスタファ・カディミ現首相が続投することになるかもしれない。カディミは、サドルともハルブシともクルド人とも良好な関係にあるからだ。

連立交渉が数カ月にわたり長期化すれば、このシナリオが現実になる可能性は十分ある。

連立政権は首相のほかにも、大統領と国会議長という2つの重要ポジションを埋める必要がある。イラクでは慣例的に、首相がシーア派ならば、国会議長はスンニ派、大統領がクルド人という権力分担がなされてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中