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シロナガスクジラが密集した船舶との接触を恐れ右往左往する様子が調査された

2021年2月8日(月)18時15分
松岡由希子

船を避けて右往左往するシロナガスクジラ Centro Ballena Azul-Twitter

<シロナガスクジラが船と衝突し、死亡するケースも確認されてきたチリ北部のパタゴニア沖を調査したところ、船を避けて右往左往するシロナガスクジラの様子がわかった...... >

チリ北部のパタゴニア沖の南太平洋東部は、現生種で最大の動物「シロナガスクジラ」の夏の摂餌場であり、繁殖場でもある。またこの海域は、世界最大規模のサケの養殖場だ。1日最大1000隻が往来し、そのうち83%が養殖業に従事している。

これまでに、シロナガスクジラが船と衝突し、死亡するケースも確認されてきたが、個々の事象が十分に報告されておらず、監視が限定的で、適切に記録されていないため、「シロナガスクジラと船との衝突がどのくらい起こっているのか」、「どのような傾向があるのか」など、詳しい分析はできていない。

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現存する最大の動物種シロナガスクジラ...... Daniel Conde-iStock

密集する船を避けて右往左往するシロナガスクジラ

アウストラル・デ・チリ大学(UACh)や米オレゴン州立大学らの研究チームは、この海域で生息するシロナガスクジラ15頭にタグを装着。5年以上にわたって追跡した位置情報をもとに、シロナガスクジラの分布を予測するモデルを構築し、このモデルをチリ水産庁(SERNAPESCA)の船舶追跡データと合わせることで、船がシロナガスクジラと衝突しやすいエリアを特定した。

一連の研究成果は、2021年2月1日、オープンアクセスジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」で発表されている。

以下のアニメーションは、あるシロナガスクジラが2019年3月22日から29日までの1週間、アンクッド湾で移動する様子をビジュアル化したものだ。青で表示されるシロナガスクジラが右へ左へとジグザグに移動し、オレンジで表示される船を避けようとしている。このことから、この海域では、密集する船にシロナガスクジラが日常的にさらされていることがうかがえる。


シロナガスクジラは絶滅危惧IB類

シロナガスクジラは、近年、個体数が増加傾向にあるものの、国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅危惧IB類(EN)」に分類されている。

研究チームは、「チリ北部のパタゴニア沖では、大量の養殖用船の往来が、船とシロナガスクジラとの接触リスクの主たる要因となっている」と指摘。「一連の研究成果によって、速やかに措置を講じるべき特定のエリアがピンポイントで示された」とし、政府や国際機関に対して、改善策を立案し、早期に実施するよう強く促している。

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