最新記事

アラスカからNZまで、11日間不休で1万2000キロ、渡り鳥の最長飛行記録更新

2020年10月19日(月)13時00分
松岡由希子

11日間、食事もとらず、不眠不休...... Paul van de Velde - wikimedia

<オオソリハシシギが、北米アラスカからニュージーランドまで1万2000キロ以上を11日間かけてノンストップで飛行したことがわかった......>

渡り鳥の一種「オオソリハシシギ(大反嘴鴫)」が、北米アラスカからニュージーランドまで1万2000キロ以上を11日間かけてノンストップで飛行したことがわかった。鳥の飛行距離としては、最長記録を更新したことになる。

オオソリハシシギは、毎年、ユーラシア大陸北部やアラスカ西部で夏に繁殖し、秋になると南半球に渡って越冬する。オスの標準体重は190〜400グラムで、長距離の渡りの前には大きさが倍になることもあるが、内蔵を収縮させて、軽量化することもできる。また、長い翼や流線形の体形など、長距離の飛行に適した特性を有する。

アラスカ南西部からニュージーランドへ

今回、この大記録が計測されたのは、ニュージーランド北島のオークランド南東部テムズ湾で2019年に個体識別用タグを装着されたオオソリハシシギ20羽のうちのオス「4BBRW」だ。シギ・チドリ類の渡り鳥を研究する国際研究者ネットワーク「グローバル・フライウェイ・ネットワーク(GFN)」によると、「4BBRW」は、2020年9月16日にアラスカ南西部を出発し、アリューシャン列島を南下した後、強い東風に後押しされながら太平洋上空、高度数千メートルを飛行し、11日後にオークランド近くの湾に到着した。

1024px-Wiki-oosorihashishigi.jpg

オオソリハシシギ。撮影地:北海道石狩市 okumi Ohsaka-wikimedia

計測データ上の飛行距離は1万2854キロだが、誤差を考慮すると、実際の飛行距離は約1万2200キロであったとみられる。これまでの最長記録は、2007年にオオソリハシシギのメスが8.1日間かけてアラスカのユーコン川からニュージーランド北島のノース岬まで飛行した1万1680キロであった。「4BBRW」の飛行距離は、これを大きく上回っている。

11日間、食事もとらず、不眠不休

オオソリハシシギが、食事もとらず、不眠不休で長距離を移動できる仕組みについては、まだ多くの謎が残されている。南半球への渡りを終えると体重が半減し、越冬してアラスカに北上する時には、アジア大陸をただるルートを取る。

matuoka1019bb.jpg

秋に南半球へ(青色)、越冬後北半球へ(赤色)

スウェーデン・ルンド大学の研究チームは、2010年5月に発表した研究論文において、「オオソリハシシギは長距離の飛行中、毎時、体重の0.41%しか消費しない」ことを算出し、1万キロ以上もの長距離を飛行し続けることができる理由として「オオソリハシシギは、他の種の鳥に比べて、エネルギー消費が異常に少ない」点を指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

OPEC月報、石油需要予想据え置き 年後半の世界経

ビジネス

米GM、ガソリンエンジン搭載ピックアップとSUV増

ワールド

トランプ氏「ベセント氏は次期FRB議長の選択肢」、

ビジネス

FRB、インフレ抑制へ当面の金利据え置き必要=ダラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 5
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 6
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中