最新記事

新型コロナウイルス

トランプ、米政府スタッフ感染を機にコロナ予防のため危険な未承認薬を服用していた

Trump Says He's Taking Hydroxychloroquine Every Day to Prevent Coronavirus

2020年5月19日(火)18時40分
ジェフリー・マーティン

「毎日服用している」と、こともなげに言ったトランプ(5月18日、ホワイトハウスの大食堂でレストラン経営者たちと) Leah Millis−REUTERS

<大統領が、新型コロナ感染予防のために、下手をすると命に関わるかもしれない薬を飲んでいた。自ら人体実験をするようなものでアメリカに衝撃が走っている>

アメリカのドナルド・トランプ大統領は2020年5月18日、レストラン業界経営者らとの円卓会議の席上で、新型コロナウイルスの感染予防のため、抗マラリア薬で新型コロナの治療薬としても期待されるヒドロキシクロロキンを自ら服用していることを明らかにした。また、新型コロナウイルスの検査は2〜3日おきに受けているとも述べた。

ホワイトハウスの医師が、ヒドロキシクロロキンの服用を勧めたわけではない。抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンは、4月ごろまでトランプが、新型コロナウイルスに効くかもしれないと科学な的証拠もなく喧伝していた薬。その未承認薬を亜鉛と併せて毎日摂取していると述べたのだ。ヒドロキシクロロキンの臨床試験はアメリカでは4月に始まったばかりで、米食品医薬品局(FDA)は治療薬として承認していない。効果があるのないのか、危険な副作用を伴わないのかどうか、評価は分かれる。それを大統領が服用していると聞いて国中がショックを受けたのはそのためだ。

<参考記事>トランプ肝入りの抗マラリア薬、新型コロナウイルス患者の死亡率上げる恐れ

ホワイトハウスに複数の陽性者

トランプがこの薬を飲み始めたのは、最近ホワイトハウスの複数のスタッフが新型コロナウイルスに感染したので、予防的な意味合いだったという。その割にトランプは公の場ではマスクもつけず、社会的距離も取らず、ホワイトハウスの感染対策が問題になっていた。

<参考記事>マスク拒否のホワイトハウスで、コロナ対策を率いるファウチ博士らが自主隔離
<参考記事>ホワイトハウスでクラスター疑惑──トランプ大統領がコロナに感染したらどうなる?

トランプはヒドロキシクロロキンについて、「1週間半ほど服用しているが、わたしは元気だ」と語り、ヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルスに効果がある「可能性はきわめて高い」と述べた。「効果がないとしても、副作用で病気になったり死んだりすることはない」

この衝撃発言の後、FOXビジネスのニュース番組司会者ニール・カブートは、呼吸器系などの基礎疾患がある人は、命取りになりかねないのでヒドロキシクロロキンを服用しないよう呼びかけた。カブートは、基礎疾患を抱える退役軍人たちが新型コロナウイルスに感染した場合の複数の研究を引用し、ヒドロキシクロロキンには効果がない可能性があると指摘した。

カブートは、5月18日の放送でこう呼びかけた。「もしあなたが重症化の可能性が高いハイリスクグループに属していて、尚かつ新型コロナウイルスに感染している場合、この薬は危険だ。いくら強調しても足りない。この薬は命にかかわる」

ヒドロキシクロロキンはマラリアや狼瘡に対する有効性が証明されている薬だが、「軽い気持ちで」、または「大統領が飲んでいるから」といった理由で服用すべきではない、というのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中