最新記事

中台関係

コロナ対策の優等生、台湾の評価が急上昇

Taiwan Scores Points in Virus Battle

2020年4月17日(金)15時30分
ジョー・キム

新北市のマスク製造企業を訪問する蔡英文総統(中央) MAKOTO LIN-OFFICE OF THE PRESIDENT

<新型コロナウイルスの封じ込め成功で注目を浴びる台湾のおかげで中国の自画自賛プロパガンダが台無しに>

しばらく新型コロナウイルスへの対応に追われていた中国が、ここへきて大規模な宣伝戦を再開している。ともかくも感染拡大を食い止めた強引な手法を自画自賛し、自らの統治モデルの成功例と喧伝して国際世論を味方に付けようとする試みだ。

習近平(シー・チンピン)国家主席も「人類の未来を分かち合う共同体」という理念を持ち出して、「責任ある大国」として恐怖のウイルスと戦う姿勢を強くアピールしている。まだ感染拡大の続く国々に向けた「マスク外交」や医療スタッフの派遣なども、大々的な宣伝戦の一環と言える。

アメリカや欧州諸国のような民主主義陣営が感染拡大の阻止に苦戦するのを尻目に、中国は強権的な隔離・封鎖措置を打ち出し、非常時における独裁体制の強みを見せつけた。しかし民主主義陣営でも韓国やシンガポールは素早い対応でウイルスの封じ込めに成功し、「中国モデル」だけが唯一の選択肢ではないことを立証している。

中国側がとりわけ神経をとがらせているのは、1月に再選を果たしたばかりの蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる台湾の成功例だ。4月11日の時点で台湾の感染者数は382人、死者は6人にとどまっている。中国との地理的な近さを考慮すれば特筆に値する成果だ。

台湾は中国に対抗して独自の「マスク外交」も立ち上げ、1000万枚のマスクを感染拡大の深刻な国に寄付すると発表した。また医療面での支援を提供するため、チェコなどの諸国とパートナーシップを結んでもいる。日頃から外交的に孤立しがちな台湾にとって、こうした関係構築の意味は大きい。

中国の虚勢とは裏腹に

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長もツイッターで、台湾によるマスク寄贈に感謝の意を表した。アメリカも台湾のウイルス封じ込めと海外援助の姿勢を称賛。WHOへの加盟を求める台湾の訴えを支持する声も高まっている。

中国としては蔡の人気に水を差し、与党・民主進歩党に根強い台湾独立の動きを牽制したいところだろう。しかし、今のところ打つ手がない。だから口先で非難を繰り出すのみ。台湾独自のマスク外交を「祖国との対立をもたらす」危険な挑発と決め付けたり、「たかがマスク200万枚で台湾を民主主義の手本とたたえるとはアメリカも落ちたものだ」と八つ当たりするのが関の山だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、潜水艦発射型ICBM「ブラバ」本格配備へ

ワールド

豪政府、再生エネ・重要鉱物供給の強化に150億ドル

ビジネス

スイスアジア運営のファンド、取締役の個別面談義務化

ワールド

TikTok禁止法、クリエイターが差し止め求め提訴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中