最新記事

中国経済

習主席は景気優先? 環境優先? 中国地方政府が板挟み

2018年12月17日(月)08時47分

12月14日、中国では、公害対策に携わる地方政府がジレンマに直面しつつある。写真は中国の国旗。河北省で昨年2月撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

中国では、公害対策に携わる地方政府がジレンマに直面しつつある。景気が減速している中で、中央の環境保護省からの指示は内容には矛盾があり、この冬も徹底して大気浄化の取り組みを実行するべきなのか、それとも経済に配慮して工場の操業維持に最善を尽くすのが良いのか分からないからだ。

中国は大気や土壌、水質汚染をもたらした「あらゆる犠牲を払って成長する」という経済モデルからの決別を約束し、大気汚染のひどい地域で新たな対策に乗り出したばかりだ。

地方政府当局者にとっては、環境基準の順守は共産党指導部への忠誠心が試される重要な機会にもなっている。ところが彼らは今年、景気を腰折れさせないという課題も背負わされた。

第3・四半期の中国の国内総生産(GDP)は世界金融危機来で最低の伸びにとどまっており、環境と景気の両面でうまく対応していくのは非常に難しいだろう。

ドイツ・ボンに拠点を置き、持続可能な社会実現を目指す自治体協議会である「イクレイ(ICLEI)」の東アジア事務局地域ディレクター、Zhu Shu氏は「公害が起きている地域の政府は大気汚染物質削減に懸命に取り組んでいるが、同時に疲弊もしている」と指摘した。

地方当局は公害対策でより柔軟な姿勢を求められているとはいえ、そうしたやり方は既に混乱の素地が生まれている。当局が寛大さを見せれば成長を追い求めていると批判され、逆に厳しく取り締まると画一的な官僚主義だとみなされてしまう。

複数の専門家は、ゴールポストが常に動いているので、どうやってちょうど良い政策運営をするべきかだれも答えを持っていないと話す。

環境保護省とのつながりがある研究者の1人は、同省が地方政府を「基準達成の義務不履行」と「過剰な政策遂行」という正反対の理由で名指しで非難している状況だと説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、12日夜につなぎ予算案署名の公算 政府

ワールド

イランの濃縮ウラン巡る査察、大幅遅れ IAEAが加

ワールド

世界原油需給、26年は小幅な供給過剰 OPECが見

ビジネス

ミランFRB理事、利下げ改めて主張 「インフレは低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中