フィリピン麻薬戦争 防犯カメラが伝える捜査という名の残虐行為
「命令に従っただけ」
警察の作戦も、おとり捜査のようには見えない。映像に映る警官たちは、ほとんどが私服で、その大半は明らかに武器を携行しており、一部は防弾ベストも着用している。彼らはカンポさんやバイタスさんの住む路地を通ってこのエリアに入った。銃撃が始まる7分前、彼らは犠牲者の家からよく見える場所を通過している。
バイタスさんの妻アーリーン・ギバガさんは、銃撃を目撃したとロイターに語り、殺された3人の男性は丸腰だったと述べた。3人の幼い子どもを持つギバガさんは、「銃を買うような余裕はない」と言う。また、夫のバイタスさんは、麻薬取引を行っていないと述べた。
自宅隣の路地に住む男性を拘束した警察は、彼女にバイタスさんの身分証明書を提出するよう求めたという。彼女が夫の身分証明書を提示すると、警官1人が「確定だ」と叫び、警官たちはバイタスさんに発砲を始めた、とギバカさんは語る。
警察官たちがバイタスさんを撃つのを見て、「夫に何をするの」と悲鳴を上げた彼女は、「報告してやる。ここには防犯カメラがあるのだから」と叫んだ。すると、警察官1人が今度は彼女に銃を向け、家に入るように告げたという。
映像には、警官が3人の男性を撃つところは映っていないが、警官1人が、画面外の標的に対して射撃を開始しているように見える。それからカンポさんが仰向けに倒れる格好で画面に入り、地面に叩きつけられた。彼の腕はしばらく動いているが、やがて動かなくなった。
1分も経たないうちに、銃撃場面を捉えたカメラは実質的に機能しなくなった。誰かがカメラを壁側に向けてしまったのだ。2番目のカメラには、警官が手を伸ばし、カメラの向きを動かす様子が映っている。
パスキュアル署長は、カメラの向きを動かしたのは「正当な治安上の理由」によるもので、作戦に邪魔が入らないためだと言う。
署長は声明で、報告書の説明を繰り返した。「容疑者がまず銃を抜いて、捜査員を撃った」ため、正当防衛で撃ち返した、というものだ。
ギバガさんはその日遅く、マニラ第2警察署で「苦情を申し立てても無駄だ」と署員に言われたと語る。その署員は彼女に、「あなたが戦おうとしている相手は政府だ」と告げたという。「私たちに腹を立てないでくれ。単に命令に従っているだけなのだから」
(翻訳:エァクレーレン)
[マニラ 27日 ロイター]
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