最新記事

大麻

医療用大麻不足のドイツ 来年解禁のカナダに依存

2017年9月29日(金)19時30分
モーゲンスタン陽子

当時シャーロットは5歳。5歳の子供に大麻を与えることにはもちろん反対が多く、両親でさえためらった。シャーロットが摂取したのは発作を沈める作用のあるCBD(カンナビジオール)の含有率の高い品種だ。一般的に大麻というと、向精神作用、つまり「ハイになれる」イメージがあるが、こちらはTHC(テトラヒドロカンナビノール)を多く含む品種となる。

ドキュメンタリーで紹介される栽培業者が、「(ハイになれる)THCの少ない品種など売れない」と言われながらもCBDの多い品種の改良と生産を増やしたのは、やはり彼らも医療用大麻の可能性を信じるからだ。この品種はその後「シャーロッツ・ウェブ」の名で知られることとなる。

大麻過剰摂取による死亡例はゼロ

しかしながら、不安要素もある。アメリカでは医療用は現在29州とワシントンD.C.で、嗜好用は8州で合法とされているが、医療用・嗜好用が合法の州で、過剰摂取の疑いにより専門施設に報告・収容された未成年の数は2005年から2011年までに年30%の割合で増えており、非合法の州よりも顕著であるという研究結果をCNNが先月報道している

この点について先述のマリカン社に問い合わせたところ、科学顧問を務めるスティーブン・ベネット博士は、「報告されるケースは眠気、めまいなどで、命に関わる症状ではない」とし、多くは慣れない症状に対する不安感からだと説明する。たとえ処方薬でも多くの若者が過剰摂取により毎日のように命を落としていく中で、大麻による死亡例が過去にまったくないことにも着目(アメリカ司法省麻薬取締局DEAレポート)。また、非合法である州では実刑を受ける可能性があるので、そもそも何かあっても通報すること自体を避けるため、公平な比較ができない点も指摘している。

その他の注意事項として、食品タイプがある。医療用大麻には従来の吸引式のほかに、錠剤、クリーム、パッチ、チンキなど様々な形態があるが、吸収に時間のかかる食品タイプはその効果を認識するのが遅れるため、過剰摂取する恐れがあるからだ。

カナダでは来年の解禁に食品タイプは含まれていない。アメリカの合法州ではグミ、クッキー、チョコレートバーなど数多くのタイプが存在するが、包装に「キャンディ」などの表示は禁じられており、また5歳以下の子供が開封できないチャイルド・プルーフの包装にするなど、パッケージにも規制が多々ある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性

ワールド

トランプ氏、8月8日までのウクライナ和平合意望む 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中