最新記事

中朝関係

中国は北朝鮮に侵攻して核兵器を差し押さえるか?

2017年9月15日(金)15時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

有事後を想定して中国が北朝鮮に侵攻して核兵器を押さえる可能性はある KCNA/REUTERS

<少し前まで中国は北朝鮮からの難民を恐れて手をこまねいているように見えたが、北朝鮮の核問題が新たな段階に入った今、新たな対応の可能性が浮かび上がってきた>

北朝鮮と長らく同盟関係を維持してきた中国は、これまで核問題にあたっても北朝鮮への圧力を強化することには及び腰だった。しかし北朝鮮が今月3日に核実験を強行し、朝鮮半島有事の危機がいっそう深まる今、中国の姿勢に変化が生じている。

中国の対北朝鮮政策は別次元にシフトしている――ジョージタウン大学外交政策大学院のオリアナ・マストロ准教授(中国軍事・外交政策)が、アメリカ平和研究所(USIP)のサイト上で最新分析を公表した。

***


1)中国はもはや、金正恩体制を維持することにはこだわっていない。過去3年程の中国の習近平国家主席の発言に注目すると、長期的には朝鮮半島の統一を公然と支持していることに驚かされる。最終的には北朝鮮が(もちろん平和裏にだが)なくなることも想定している。

世論調査などを見ても、中国国民は概して中国が北朝鮮と距離を置くことに賛成している。

【参考記事】<戦争シナリオ>北朝鮮はどうやって先制攻撃してくるか

2)これまで朝鮮半島有事の際の中国の最大の関心事は、北朝鮮から国境を越えて逃れてくる難民にどう対処するかだったが、現在はそれに北朝鮮の核兵器をどうするかという問題が加わった。

中国人民解放軍(PLA)の軍事力は過去10年の間に大幅に改善され、それに伴って朝鮮半島有事の際の行動計画も大幅に拡大したものと考えられる。北朝鮮の核兵器や核燃料施設を差し押さえることもPLAの計画には含まれているだろう。

中国が北朝鮮の核兵器を接収する目的は、北朝鮮に核兵器を使用させないためだけでなく、米日韓に核兵器を攻撃させないためでもある。仮にそうなった場合には、国境を越えて放射能汚染が中国にも及ぶからだ。

3)PLAが金正恩体制を防衛するために戦うことは考えにくい。中国政府高官も朝鮮半島有事への介入を求められるとは考えていない。

むしろPLAが軍事介入すれば、朝鮮人民軍から反撃を受けるかもしれない。しかし、朝鮮人民軍は米韓連合軍と対峙して南部に集結している。少なくともその点では中国側に有利だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:インドでリアルマネーゲーム規制、ユーザー

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

台湾閣僚、「中国は武力行使を準備」 陥落すればアジ

ワールド

米控訴裁、中南米4カ国からの移民の保護取り消しを支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中