最新記事

テクノロジー

ライバルAIアシスタントの意外なコラボ

2017年9月16日(土)16時10分
ケン・マンバート・サルシド

マイクロソフトのアプリ「コルタナ」(左)とアマゾン・エコー(右) David Paul Morris-Bloomberg/GETTY IMAGES; Amazon.com, Inc,

<音声認識AIアシスタント開発で競う大手2社が連携。アマゾンとマイクロソフトのコラボで可能になることは>

人工知能(AI)の進化の波は、企業間の壁まで乗り越えるらしい。アマゾン・ドットコムとマイクロソフトは8月末、双方の音声認識AIアシスタントを接続し、連携させることを発表した。開発でしのぎを削る大手2社の連携は異例のことだ。

間もなく、アマゾンの「アレクサ」とマイクロソフトの「コルタナ」はどちらも、アマゾンの音声認識スピーカー「アマゾン・エコー」で使用できるようになる。「アレクサ」と呼び掛けてAIアシスタントを起動させていたエコーのユーザーは、「アレクサ、オープン・コルタナ」と言うだけでコルタナを呼び出せる。

同様にウィンドウズ10のユーザーは、「コルタナ、オープン・アレクサ」と話し掛ければアマゾンで買い物もできる。さらに双方のユーザーは、外部開発者がアレクサに提供する合計2万以上もの機能が利用可能になる。

アマゾンとマイクロソフトは今年中に接続を開始する予定。コルタナ経由でアレクサを利用することはウィンドウズ10のパソコンで一足先に実現し、その後にアンドロイドやiOSの機器でも対応。コルタナは、アレクサ搭載のあらゆるアマゾンの機器から利用できるようになる。

非常に珍しい大手2社のコラボだが、ニューヨーク・タイムズ紙は両社が16年5月から水面下で連携を探っていたと報じた。

【参考記事】いよいよスマートスピーカー発売ラッシュ。最後に笑うのは?

アマゾンのジェフ・ベゾスCEOはインタビューで、人々は可能な限り、多岐にわたるAIアシスタントにアクセスできるようになるべきだとの信念を語った。「世界は広く、多面的だ。今後は異なるデータセットや専門分野に接続する多種多様なAIエージェントが存在することになるだろう。それらをまとめ上げれば相互に補完し合い、より豊かで役立つ体験をユーザーに提供できる」。

コルタナとアレクサにはそれぞれ特徴があり、接続は相互に有益になるとの考えで、ベゾスもマイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOも一致する。例えばコルタナは、アウトルックやカレンダーアプリとの一体化が進んでいる。アレクサは家庭用娯楽機器の機能が強みだ。「どちらも個性と専門性が強いため、相互作用によって多彩な機能を利用できる」とナデラは言う。「その点に私もベゾスも共鳴し、協業につながった」

AIアシスタントの開発レースは激化の一途だ。アップルはSiri(シリ)搭載のスピーカー「ホームポッド」を年内に発売予定。グーグルのグーグル・アシスタントはスマートフォンや家庭用スピーカー「グーグル・ホーム」で利用できる。

アマゾンとマイクロソフトがコラボした今、アップルとグーグルも加わることになるのだろうか? 現時点ではほぼあり得ないだろう。シリとグーグル・アシスタントはそれぞれの社が独占するモバイルOS、iOSとアンドロイドに深く結び付いているからだ。

それでもナデラは、彼らが参加したいと決めれば歓迎するという。AIで垣根を取り払おうとの決意は確からしい。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年9月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体が技術供与 推論分野強

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中