最新記事

日本人が知らないAI最前線

AIを使えば、かなりの精度で自殺を予測できる

2017年7月11日(火)16時45分
マシュー・ハットソン

そこで研究者らが提案するのが、数々の危険因子から有用なパターンを見つけるAIのアルゴリズムの開発。クリニカル・サイコロジカル・サイエンス誌に最近掲載された論文は、その将来性を示している。

バンダービルト大学医療センターのコリン・ウォルシュ助教はリベイロらと共に、自殺未遂や自傷行為で入院した患者3250人と、自殺未遂の経験がない患者1万2695人の電子カルテを比較。人種や年齢、薬の服用、既往症など診察で得られるデータに限定してコンピューターに機械学習させ、1週~2年間の期間で自殺を予測できそうなパターンを見つけ出させた。

するとAIアルゴリズムの予測精度は「2年以内に自殺を試みる可能性」で86%、「1週間以内」では92%に達した。ちなみに、リベイロらがメタ分析した各種要因の精度は約58%だ。

難しいのはこれを治療にどう生かすかだ。データの共有法や、自殺の危険性を誰に知らせるかという問題がある。自分の勘より機械を信じるよう、医師たちを納得させるのも大変だ。ウォルシュが考えるのは、コンピューターの助言を参考にして医師が判断する「ハイブリッド」な方法。反対に、人間の判断がコンピューターに入力するデータになると想定する専門家もいる。

自殺は家族や周囲の人々を打ちのめす悲劇。アルゴリズム利用の課題は多いが、ひるまずに自殺増加に歯止めをかける努力を続けるべきだ。

【参考記事】帰還後に自殺する若き米兵の叫び
【参考記事】伊でリベンジポルノの被害者自殺、レイプ拡散など相次ぐネットの性暴力

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:中東ファンドがワーナー買収に異例の相乗り

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す

ワールド

中国の輸出競争力、ユーロ高/元安で強化 EU商工会

ワールド

新STARTの失効間近、ロシア「米の回答待ち」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的、と元イタリア…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中