最新記事

軍事産業

国際法禁止クラスター爆弾メーカー、三菱UFJなど金融160社が投資

2017年5月24日(水)16時35分

5月23日、オランダの平和推進NGO「PAX」は、国際法で禁止されたクラスター爆弾の製造会社に対する金融機関からの投資が、最近4年間で310億ドルに達したとの報告書を公表した。写真はシリア北西部、イドリブ県南部で集められたクラスター爆弾。昨年9月撮影(2017年 ロイター/Khalil Ashawi)

オランダの平和推進NGO「PAX」は23日、国際法で禁止されたクラスター爆弾の製造会社に対する金融機関からの投資が、最近4年間で310億ドルに達したとの報告書を公表した。

2013年6月―2017年3月の間に銀行、年金基金、保険会社など160社以上が、クラスター兵器製造会社6社に投資していたという。

クラスター爆弾は上空から投下されるか、発射装置から射出され、空中で爆発して内蔵した数百もの「子爆弾」を広範囲にまき散らす仕組み。不発となった子爆弾は除去するのが難しく、紛争終了後も長期にわたり民間人に被害を及ぼす。国連によると、シリアの内戦では北部アレッポの人口密集地でロシア軍がクラスター爆弾を使用した。

2010年にはクラスター爆弾禁止条約が発効し、100カ国以上が批准した。PAXが名指しした企業は、条約を批准していない米国、中国、韓国などが大半を占めている。

ただ、クラスター兵器メーカーに投資したとされる15の金融機関は、条約批准国であるカナダ、フランス、ドイツ、日本、スペイン、スイス、英国の会社だという。*1

クラスター爆弾メーカーに投資した企業数は、2016年に公表された報告書の150社超から増加し166社となった。ただPAXは、このような投資は容認できるものではなく、企業の評価に影響するリスクもあるとの認識が投資家の間に広がっていると指摘した。

世界100カ国以上で兵器根絶運動を展開している「クラスター兵器連合」(CMC)のフィローズ・アリザーダ氏は「クラスター爆弾は明確な理由によって禁止されている。一般市民に過剰な危害を加えるものだからだ」と指摘。「銀行や金融機関が、違法で有害なこれらの兵器のメーカーに1ペニーたりともお金を投じてはならないのはそれが理由だ。どのような企業や国も、クラスター兵器を製造すべきではない」と強調した。

[ロンドン 23日 トムソン・ロイター財団]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

*注1 「PAX」が公表した報告書には、国際法で禁止されたクラスター爆弾の製造会社に対して投資をした日本の金融機関として、三菱UFJフィナンシャル・グループのほか、第一生命保険、オリックス、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友信託銀行が挙げられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中