最新記事

サウジアラビア

ソフトバンクと提携したサウジ副皇太子が握る王国の未来

2016年11月3日(木)09時40分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

Tim E White-Photolibrary/GETTY IMAGES

<石油依存経済からの脱却を主導する若きプリンス・ムハンマド副皇太子が、1000億ドル規模の投資ファンドで変革を仕掛ける>(写真:潤沢過ぎるオイルマネーが、サウジの社会変革の妨げにもなってきた)

 サウジアラビアで最近、際立って存在感を増しているムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(31)。欧米ではMBSのイニシャルで知られる彼は、サウジ経済の原油依存度を減らして産業の多角化を図る改革の陣頭指揮を執っている。

 ムハンマドは先月半ば、孫正義社長率いるソフトバンクグループとの提携を発表した。先端技術への投資を主眼とする、1000億ドル規模のファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を創設する計画だ。

 ソフトバンクは今後5年間で少なくとも250億ドルを出資。サウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)も5年間に最大450億ドルを拠出する可能性がある。どちらにとっても、前例のない規模のファンドとなる。

 この投資ファンドが資金の5分の1を毎年投資に回すだけでも、テクノロジー業界には大きなインパクトとなるだろう。最近は目ぼしい投資話が浮かんでこないだけに、世界中の起業家やスタートアップ企業から歓喜の声が上がりそうだ。

 サウジアラビアは先日、国際市場で初の国債発行を行い、主にアジアの投資家から175億ドルを調達。新興国による国債発行では、過去最大を記録した。

【参考記事】大胆で危険なサウジの経済改革

 オイルマネーで潤う産油国がなぜそんなに資金を必要としているのか? それはテクノロジー業界への投資に動いたのと同じ理由、つまり石油だ。

 石油は恵みであると同時に重荷でもある。オイルマネーは、貧国だったサウジアラビアをG20入りさせるまで成長させた。一方で過度の石油依存は経済活動をゆがめ、腐敗を誘発し、為政者たちが国の構造改革を先送りすることを許してきた。

 もちろん、原油価格が常に市場動向に左右されることも問題だ。14年夏に1バレル=110ドルを突破したかと思えば、16年には1バレル=27ドル台まで下落した。急激な価格変動によって、サウジアラビアの財政赤字は1000億ドル近くにまで膨らんだ。GDPの約15%に相当する額だ。

年長の皇太子を出し抜く?

 原油市場の激動は、ムハンマドがサウジ経済の再建を託された時期と重なった。ムハンマドは今年4月、経済改革計画「ビジョン2030」を打ち出した。

 その柱の1つが、国営石油会社サウジ・アラムコの株式を国内外で上場し、そこで得た資金を投資に回す計画だ。18年に上場予定で、同社は株式の5%を公開するだけでも1000億ドルを調達できると予想される。サウジアラビアは世界最大規模の投資余力を持つ国として躍り出るだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:5年目迎えたウクライナ戦争、戦車が消えド

ビジネス

パラマウント、WBD買収へ 第3四半期完了の見通し

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ521ドル安 イラン緊迫や

ビジネス

NY外為市場=ドル軟調、155円台後半 イラン情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    トランプがイランを攻撃する日
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中