最新記事

米大統領選

ダラス警官銃撃事件が大統領選の流れを変える

2016年7月14日(木)16時00分
マシュー・クーパー

 92年、黒人青年ロドニー・キングを暴行した白人警官に無罪評決が出たことへの不満が爆発する形で起きたロサンゼルス暴動では、逆の結果になった。当時民主党の大統領候補だったビル・クリントンは、暴力を非難すると同時に、警官に対する黒人の不満に共感を表明。秩序の回復という重要テーマで現職のジョージ・H・W・ブッシュよりも頼りになる印象を与え、有権者の心をつかんだ。

 かつてのニクソンのように、現在の混乱がトランプの追い風になる可能性はある。クリントン陣営は、米軍最高司令官を兼ねる大統領には「静かなリーダーシップ」が必要であり、トランプは不適格だという主張の説得力が増すとみているかもしれない。だがクリントンも、黒人など少数派の支持基盤を維持したければ、警官による暴力の問題に正面から取り組むことを求められる。

【参考記事】クリントンの私用メール問題はまだ終わらない

 1963年11月、同じダラスで起きたジョン・F・ケネディの暗殺は、事件や暴動の政治的影響がいかに予測困難かを示すいい例だ。

 現職大統領の射殺事件は全米の同情を集め、64年の大統領選は同じ民主党のリンドン・ジョンソンが圧勝。30年代のニューディール政策以来、最も目覚ましい社会改革「偉大な社会」政策のきっかけとなった。だが同時にケネディ暗殺は、ベトナム戦争の激化とアメリカの保守化の前触れでもあった。

 今回のダラス事件も、政治的影響がはっきりするのはしばらく先になりそうだ。

[2016年7月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペルシャ湾岸3カ国、SWF通じた投資見直し イラン

ワールド

北朝鮮の金総書記、娘と弾薬工場視察し拳銃試射=KC

ビジネス

任天堂、「ぽこ あ ポケモン」の世界販売本数が発売

ビジネス

日産がウーバーと自動運転で協業、年後半に東京でロボ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中